金融機関にモノ申す

ドル定期預金0.01%⇒5.30%は、三井住友銀行が「大幅値下げ」をするということ

2023年9月20日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

投資信託の世界で「値下げ」といえば、
運用管理費用を引き下げることです。

また、ファンドの購入時手数料を
2%から1%にしたり、

購入時手数料を『ゼロ』にすることも値下げですね。

 

この文脈で「外貨預金」を見れば、

 

今般発表された
『ドル定期預金』の金利を、
0.01%から 5.30%へ変更するという三井住友銀行の発表は、

同行が「大幅値下げ」をすることに他なりません。

 

 

 

画像元:三井住友銀行

 

 

おそらく金利の「数字」は違えど、

みずほ銀行も三菱UFJ銀行も
ドル定期預金の適用金利を見直してくるでしょう。

 

 

 

世の中には「早く」動く人と、
「遅く」動く人がいます。

 

 

「遅く動く人」に焦点を当てると、

そういう人でも、
アメリカの金利が高くなっている事は、知っているわけです。

 

なのに、
自分の『ドル預金』の金利がほとんど付いていないのは「コレ、おかしいよなぁ」と感じているわけで。

 

 

金融サービスを比較・検討する際に、
消費者としての
『コレ、おかしいよなぁ』という感覚はとても大切です。

 

 

 

 

日経新聞のこちらの記事によれば、

現在、三井住友銀行は
グループ内のSMBC信託銀行と合わせて
約2兆円の『ドル建て預金残高』があるのだそう。

 

米国金利が上昇を続けているのは事実です。

 

そのような状況下で、銀行がドル預金金利「ほとんどゼロ%」の状態を、長く続けられれば続けられるほど、銀行側からすれば、利ザヤは大きくなるわけです。
(※銀行は非常に安いコストで調達した「ドル」を、米国債などで運用すればよいわけですから。)

 

 

換言すれば、

これまで多くの銀行が
米ドル預金において
「ほぼゼロ%の金利」を提示してきたことは、

サービスとして
「法外な値段」を取ってきたのと同義なのです。

 

 

 

 

 

わたしは
経済ジャーナリストの後藤達也さんの
note(有料)を購読しているのですが、

今回、後藤さんが以下のような記事を書いておられました。

 

後藤達也さんのnote記事

 

 

 

印象的だったのが、次のことばです。

 

顧客が鈍感ならば、銀行にとってのうまみが大きく、金利を無理に変える必要性は低くなります。

 

 

これは重要な指摘です。

 

 

実は投資信託も同じ構造であり、

 

顧客が鈍感ならば、
銀行・証券会社はうまみが大きく、
無理にファンドの『手数料体系』を変える必要などなかったのです。

 

 

ちょっと「歴史」を振り返ってみましょう。

 

 

 

 

 

金融サービスの歴史の9割がたは、

サービス提供側と
顧客側の
『情報の非対称性』があまりにも大きく、

 

 

ちょっと意地悪い言い方をすれば、
金融機関側が
「法外な値段」を取り続けてきた歴史でした。

 

 

 

しかしネット証券が登場して、
わずかに風向きが変わり始めます。

 

 

Eトレード証券(現:SBI証券)や
DLJディレクトSFG証券(現:楽天証券)は、
1990年代終わりにサービスを開始しています。

 

 

 

 

 

しかし、
最初の5年が経っても7年が経っても、
まだまだ「知る人ぞ知る」という存在でした。

 

言い方を換えると、

新興勢力であるネット証券は、鈍感ではなく、「敏感」(びんかん)な顧客を取り込むしかなかったわけです。

 


そして『敏感な顧客』は要求レベルが高く、

ネット証券は少なくとも
株式の取引、投資信託の販売においては、
「法外な値段」を放棄し続けることになります。

 


「敏感」な顧客しか振り向いてくれず、→ 敏感な客は「法外な値段」についてモノ言う顧客のため、

→ 利ザヤを削ってでも、法外な値段を放棄し、コストを下げる → それでも収益を上げるためには「サービス内容」を革新し続けるしかない → そこにまた「敏感」(びんかん)な顧客が反応する・・・

 

というような、

10年、20年と続く、
『サービス革新・ブートキャンプ』に参加し続けてきたのがネット証券会社の歴史なのです。

 

 

 

 

 

世の中には「早く」動く人と、
「遅く」動く人がいますが、

金融サービスにおいては、
「遅く動く人」でも十分な知識を持ち合わせる人が増えてきています。

 

たとえばネット銀行やネット証券を、
たった今35歳で利用し始めた人が、

 

自身が65歳になった時に
野村證券や三井住友銀行の店頭で
取引を始めるようになるとは思えません。

 

三井住友銀行もそのような危機感を抱いており、
今回のドル預金金利の変更に至ったのでしょう。

 

 

もう一度、
後藤さんのことばを引用しましょう。

 

顧客が鈍感ならば、銀行にとってのうまみが大きく、金利を無理に変える必要性は低くなります。

 


顧客が敏感(びんかん)になることで、
金融機関のサービスは進化します。

いや、私たちが敏感になることでしか、
金融サービスは進化しないのです。

 

 

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