投資はテニスのゲームと同じ(打ち勝つのではなく、ミスをしないこと)
2023年8月23日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
もう10年以上前に、
著書『敗者のゲーム』で有名な
チャールズ・エリス氏の講演会(東京)に参加したことがあります。
実は氏の存在を世に知らしめたのは、
書籍「敗者のゲーム」の下敷きになっている、
論文『Loser’s Game』(敗者のゲーム)の発表です(1975年)。
この論文の中の、辛辣かつ核心を突くことばが以下です。
The investment management business
(it should be a profession but is not) is built upon a simple and basic belief:
Professional money managers can beat the market.
That premise appears to be false.
資産運用ビジネス、
ーそれは立派な職業であるべきだが、実はそうではない―は、
シンプルで基本的な信念の上に成り立っている。
それはプロのマネジャーは市場を打ち負かすことができるというもの。
その前提はどうやら間違っているようなのだ。
1975年当時、上の言葉が持つ「革新性」を想像してみて欲しいのです。
わたしがチャールズ・エリス氏の講演会に参加できたのは
一生の思い出といってもよいのですが、
氏は講演会の中で、著書でも有名なテニスのエピソードを
披露してくれました。
エリス氏は奥様との『テニス』を例に挙げ説明していきます。
彼女は優秀なテニスプレーヤーですよ。
でも、しきりに「わたしが勝った。わたしが勝った」って言うんです。
まるで、自分が主人公のように・・。
でも、彼女が勝ったのではなく、
わたしが彼女のサーブを取り損なって、
(つまりはわたしがミスをしたから)
彼女に軍配が上がっただけ・・。
ゲームの主人公はわたしだったのです(笑)
資産運用においても、
あなたが誰かに勝つというより、
運用の途上で「いかにミスをしないか」。
ここが勝敗を分けるということなのです。
(⇒ 要は「負けないゲーム」を心がけることが重要。)
エリス氏はまた、
『行動心理学』の話もされました。
「わたしなら(市場平均を)
上回るリターンをあげることが可能だ」という、自信過剰がどんな結果をもたらしているか。
(60%の機関投資家は市場平均に負けている。
個人投資家はもっとひどい・・)
人は過剰な評価をしてしまう
(「親しみ」と「ほんとうの理解」を混同してしまうのです。)
あるいは他にも、
売買回転率が100%を超えるポートフォリオを例に挙げ、
無限の選択肢の中から
銘柄のピックアップを行っている実態を説いていました。
【重要なのは市場ではなく、私たち自身です。】
ということばです。
市場はこれまでも、これからも、
変わらず我がままに存在し続ける。
大切なことは、
『私たちが』市場に対してどのように振る舞えるのか・・。
エリス氏はまた「スキー」を例に挙げ、
はじめてスキーをする人は、なだらかな斜面を選びます。
スキーの熟練者は頂上近くから滑り始め、
アップダウンのある斜面を選びますね。
「貴方はあなたにふさわしい
市場との接し方を選択すべきでしょう。」と話されていました。
今でも思い出すのですが、
氏の口から、
「(ポートフォリオは)放っておきなさい。」
「インデックスファンドでグローバルに分散するのです。」
「退屈ですよ・・・。」
(↑ご自身があくびのマネをしながら言われていた!)
のような言葉を聞くにつれ、
わたし自身『投資スタイルの原点』を
再確認するような気持ちになったものです。
真に優れた人は、その主張にブレがありません。
それは広大な裾野に生える「葦(あし)」のようであります。
頑なという意味ではなく、
日常の些細な例を挙げながら、
ひとつの至言を、幾通りものパターンで平易に説明できる人なのです。
シンプルさは決して単純ではなく、高みに咲く洗練という名の花なのです。
カテゴリ:インデックス投資全般