【パート2】ノルウェーにいったい何があるというのですか?(Government Pension Fund Globalという政府系ファンドがあります)
2023年7月5日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
ノルウェーの政府ファンド
『Government Pension Fund Global』は1996年に運用を開始しました。
この種のファンドは、
国家の金融資産を運用するファンド
ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)と呼ばれます。
運用を行っているのは、
中央銀行のである
ノルウェー銀行傘下のNBIM
(Norges Bank Investment Management)という資産運用会社です。
その運用資産規模は・・現在約200兆円!
日本のイメージでいえば、
「日本銀行」の傘下に資産運用会社を作って、
そこが数百兆単位の
グローバル運用を行っているようなものです。
昨日お話した通り、
当該ファンドは
ノルウェー国内の資産には投資を行っていません。
自国経済のボラティリティから、
ファンド資産をヘッジすることが真に重要であると考えるためです。
ノルウェー経済がなんとかならない時を想定したお金の配置図を重視。
(目的が異なるとはいえ、
自国の「株式ETF」のみを何十兆円と買い付けている中央銀行とは大違いですね。)
その他、当該ファンドは
〇 石油関連の企業には投資しない
〇 たばこ関連の企業にも投資しない
という『ルール』を堅持しています。
政府ファンドの「目的」は次世代に富を継承することであり(超長期の運用)、ノルウェー政府はファンドから予想される収益分しかお金を引き出せません。
いかに仕組みを厳格に構築しているかがお分かりいただけるでしょう。
念のため、
日本経済新聞『ノルウェー政府年金基金とは ESG投資の旗振り役』(23年4月20日)より引用しておきましょう。
▼ノルウェー政府年金基金
北海の石油・ガス田から得る
ノルウェー政府の資源収入を原資として、
国民の年金資産を増やすために設立されたファンド。
政府系ファンドとしては世界最大級の運用規模で、
運用残高は2017年に1兆ドル(約135兆円)を超え、
足元は1.2兆ドル(約170兆円)にのぼる。
世界の上場株や債券のほか、不動産などにも分散投資している。
その『ポートフォリオ』はどうなっているのでしょう?
(Norges Bank Investment Management サイトより。
2022年末現在)
債券 48ヵ国 1430銘柄 27.5%
不動産 14ヵ国 890物件 2.7%
基本アクティブ運用であり、
国・地域、通貨の分散に留意しながら、銘柄をピックアップしています。
ちなみに当該ファンドは不動産890物件の中で、
JR原宿駅近くの「ヴェロックス28ビル」の7割の持ち分を所有していたりします。
画像元:日本経済新聞『ノルウェー政府年金基金とは ESG投資の旗振り役』
昨年(2022年)がいかに厳しい年であったかが分かりますね。
ちょっと算数にトライしてみましょう。
200兆円の運用資産があれば、
年に2%の取り崩しでも4兆円です。
4%の取り崩しなら、8兆円。
ノルウェー人の医療、年金、教育、福祉サービスを充実させている様が想像できます。
地球上でもっとも豊かな国のひとつといわれる理由のひとつが、国民の資産の運用にあるわけです。
そして、すべてはこの『精神』からスタートしています。
石油の富から、金融の富へ。
「Government Pension Fund Global」のアニュアルレポートを眺めれば、
自身の存在が巨大になればなるほど、
『投資家』として
その姿勢が謙虚になっていく姿が見て取れます。
それは素晴らしいのひと言です。
もちろん、
日本でも
グローバル分散を旨とした国家ファンドの運営は可能であるはずです。