【パート2】杉田浩治さんの論文『世界の投資信託の五大トレンド最新事情と日本への示唆』より
2023年3月28日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
昨日に続き、
杉田浩治さんの論文、
よりお届けます。
世界の投信の『五大トレンド』
二つ目は・・・、
次のグラフをご覧ください。
【アクティブ運用ファンドとパッシブ運用ファンドの構成(2021年末)】
画像元:『世界の投資信託の五大トレンド最新事情と日本への示唆』
従来型インデックスファンドと指数連動型ETFを併せたパッシブ運用ファンドの投信全体に占める比率(以下「パッシブ比率」)は、日本が30%、欧州は19%である。
これに対し、米国では40%を超えて最もパッシブ化が進行している。
「ワタシは誰にも負けない。ナンバーワンよ!」を自認するアメリカにおいて、これほど『平均投資』が普及するとだれが想像したでしょう・・。
また、日本の『パッシブ比率』もずいぶん高くなりました。
この5~10年内で、
実際にインデックスファンドやETFを購入した「あなた」が、まさに比率向上に貢献しているわけです。
欧州はアクティブ運用型ファンドの比率が最も高いです。
その理由は?
「主として銀行が投信を販売している独・仏・伊において、FAが依然として(ファンドからの報酬のキックバックが多い)アクティブ運用ファンドを販売しているため、パッシブ化⑷が進んでいない」と分析している。
注:FAとはファイナンシャルアドバイザーのこと。
昨日、FPの高橋忠寛さんを例に
顧客から直接「報酬」を受け取るアドバイザーの実例を取り上げました。
欧州、特に大陸ヨーロッパでは
このような「直接・報酬請求型」より、
(投資信託を販売することで)手数料を受け取る「コミッション収入依存型」のほうがまだまだ多いのです。
続いて3つ目のトレンドは・・・
世界の投資信託(除くETF)の伸びは、
2016年末~2021年末の5年でおよそ1.5倍でしたが、ETFのそれはおよそ3倍となっています(純資産残高ベース)
ただし、ここには「からくり」もあります。
実はETFマーケットの中心は『アメリカ』なのです。
世界のETF資産残高の約72%を、米国上場のETFが占めます(まさに「一強」状態。)
【ETFの地域別内訳】(2021年末)
画像元:『世界の投資信託の五大トレンド最新事情と日本への示唆』
上図の『折れ線グラフ』部分が、日本、欧州、米国における、公募投資信託に占める「ETFの比率」です。
ETFの普及度を見る意味で、公募長期投信残高全体に占めるETFの比率を計算すると、図表4の折れ線で結んだ点のとおりであり、日本の10.7%、欧州の8.8%に対し、米国では24.5%に達している。
米国でのETFの隆盛は、
従来型ファンドに比べ税制上有利なしくみ(実際の売却まで課税が繰り延べされる)を備えていることも要因のひとつでしょう。
日本の国内設定ETF市場は・・?
いびつと言わざるを得ません。
東証上場のETF全体でおよそ59兆円の純資産残高がありますが、
そのうち日銀の保有がおよそ50兆円を占め、
『日銀のためのマーケット』に成り下がっているのです。
最後に、
投資信託の市場を『世界規模』で俯瞰してみましょう。
杉田さんの論文の冒頭、
2016年末~21年末の5年間で
世界の公募投資信託残高は約57%増加したと記されています。
投資信託協会が公表する
「投資信託の世界統計」(2022年第4四半期)という資料を見てみましょう。
「中国」が第4位に入っていますね。
時間軸を長めに取れば、
これから先、
「インド」や「マレーシア」や
「ポーランド」や「インドネシア」といった国々が、
一人当たりの所得が増加することで、
自国の投資信託残高が増加し続けることが予想されます。
ファンド(投資信託)は、持ち家や、クルマや、海外旅行と同じく、中流階級の「アイコン」のひとつとなり、
例えばあなたが海外の友人・知人と話すときに「どのメーカーのスマホ使っているの?」という会話と同様に、「どんな投資信託で資産運用しているの?」という会話が自然と交わされるようになるはずです。
誤解を恐れずに言えば、
投資信託という商品の成長は
(まだ)始まったばかりなのです。
カテゴリ:インデックス投資全般, 投資信託あれこれ