【パート1】杉田浩治さんの論文『世界の投資信託の五大トレンド最新事情と日本への示唆』より
2023年3月27日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
本日は
世界の投資信託事情に詳しい
杉田浩治さんの論文から・・。
杉田さんは
元・日本証券経済研究所特任リサーチ・フェローでいらっしゃいます。
日本の投資信託の隆盛とともにキャリアを歩まれてきた方で(まさに)この業界の重鎮。
さて、
杉田さんが上記論文で記す『五大トレンド』とは?
2.パッシブ化
3.ETF(上場投信)の伸張
5.カスタマイズド(個別運用)商品との競合
今回は1~3に絞ってお話をします。
まず、
ファンド経費(コスト)の『削減』について、以下のグラフが興味深いです。
【株式ファンド(除くETF)の(加重平均)年間経費率の推移(%)】
画像元:『世界の投資信託の五大トレンド最新事情と日本への示唆』
最初に「加重平均の」
年間経費率について、若干の補足が必要でしょう。
10本のファンドの単純平均コストですね。
しかしながら、
投資信託という道具は『規模の大きさ』が物を言います。
仮に今、
年間経費率0.1%のAファンドがあり、
純資産額が1兆円あるとしましょう。
いっぽうのBファンドの年間コストは1%。
しかし純資産額は100億円しかありません。
この場合、
2本のファンドの「平均コスト」は年0.55%であります。
と言ってしまうには無理があると思いませんか?
つまり、『加重平均』年間経費率とは、
ファンド純資産額の大きさを考慮した「平均コスト」のことなのです。
画像元:『世界の投資信託の五大トレンド最新事情と日本への示唆』
再び上図をご覧いただくと
米国のファンドの、
加重平均コストの低さが顕著ですね。
加重平均経費率で見ると、米国は0.47%で
日本・欧州の半分以下である。
日本は、欧州と近いです。
実は、生活者の「安全資産」と「リスク資産」の保有比率で見ても、日本人は欧州人のそれと似通っています(ヨーロッパよりもさらに保守的ではありますが。)
米国では投資信託の平均経費率が低くなるのでしょうか?
『答え』を先に言ってしまうと、
(結果、)投資信託の「純資産残高」は成長を続け、
そういう『好循環』が続いているわけです。
繰り返しになりますが、
投資信託のビジネスは『規模のビジネス』です。
年間コストが0.1%だと売上げは10億円。
しかし純資産額が100兆円になれば、
年間コスト0.1%でも
売上げは1000億円です。
たとえ年間コストを「0.05%」に引き下げても、
売上げは500億円もあるわけです。
なので年間コストを更に引き下げる『余力』が生まれやすい。)
二つ目の理由は・・・?
米国では、FA(ファイナンシャルアドバイザー)が投資アドバイスに対するフィーを投資家から直接(ファンドの外で)受け取る方式へ移行しつつある。
その結果、ファンドから販売関連費用が支出されず、ファンド経費は運用フィーと保管・口座管理フィー等のみであるケースが多い。
ここは少し分かりづらいかもしれません。
ちょっと、脱線してもいいですか?
「ほけんの窓口」が投資信託の販売を始めるようなのですが、
『ほけんの窓口、金融商品仲介業に進出へ NISA拡充に的』(日経新聞電子版)
あなたは「ほけんの窓口」が、年間コスト0.1%のインデックスファンドを積極的に勧めてくれると思いますか?
わたしには思えません。
なぜなら、
「ほけんの窓口」は手数料収入で稼いでいるためです。
いっぽう、
投資助言業を行っているFPの高橋忠寛さん。
高橋さんは資産運用の具体的な指南、資産管理のサポートで、お客様から直接「報酬」を受け取っています。
(具体的にはお客様の運用資産額の「%」で、報酬額をチャージされているのです)
この時、
高橋さんが、年間コスト0.1%のインデックスファンドをお客様に勧める『動機づけ』が形成されます。
平たくいえばアメリカでは、
「ほけんの窓口」的ビジネスより、
高橋忠寛さん的ビジネスが支持されているため、
投資信託の『年間コスト』は低下し続けているわけです。
カテゴリ:インデックス投資全般, 投資信託あれこれ