株式の売買委託手数料『ゼロ化』の波は、チャールズシュワブ証券からSBI証券へ
2023年2月20日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
日本でネット証券が誕生して20数年が経ちますが、いよいよ節目の年を迎えます。
SBI証券が本年9月末までに、
株式の売買委託手数料の『完全無料化』に踏み切るためです。
昔の感覚でいえば、
証券会社が株式の売買委託手数料を「ゼロ」にすることは、証券会社の『死』を意味しました。
ところが、
SBI証券ではもはや
「個別株」の売り買いの仲介をすることが、
メインの仕事(&収益源)ではなくなっています。
画像元:株式会社SBI証券『決算説明資料』
(実は)ネット証券の「収益構造多角化」はアメリカで先行して始まりました。
そのロールモデルを担うのが、アメリカの大手オンライン証券『チャールズシュワブ証券』です。
チャールズシュワブ証券が、株式の売買委託手数料『ゼロ化』に踏み切ったのが2019年10月7日のことでした。
後々語り継がれることになる「重要な1日」だったのです。
この日、チャールズシュワブ証券は、
米国株式、ETF、オプション
オンライン上の取引にかかるすべての売買手数料を『ゼロ』にしました。
ホントにCommission-free、『ゼロ』です。
シュワブ発表の翌日、
競合の「TDアメリトレード証券」も「Eトレード証券」も、売買委託手数料『ゼロ化』を発表しました。
株式の売買委託手数料は「過去の遺物」となっています。
そして日本もそうなるでしょう。
本年9月末までに、SBI証券が株式の売買手数料を『完全無料化』すれば、楽天証券やマネックス証券やauカブコム証券は黙って口を開けたまま座っていることはおそらく出来ないでしょう。
もう、現在形で書きますね。
投資の『取引』に関するコストが無料になることを、私たちは素直に喜ぶべきなのです!
大きな理由の一つが、大手金融機関に匹敵する
『預かり資産残高』を獲得しているためです。
ウォール・ストリート・ジャーナルの特集記事
『The Race to Zero Commissions』によりますと、
2019年9月末時点で、
チャールズシュワブ、TDアメリトレード
Eトレード3社を合わせた顧客預り資産残高はおよそ6兆ドル。
それに対して、
バンク・オブ・アメリカ(含むメリルリンチ)の
富裕層向けビジネスのそれはおよそ2.9兆ドル。
また、モルガン・スタンレーの証券ビジネスにおける
預り資産残高は約2.6兆ドル。
顧客資産を集めているからこそ、
売買手数料「ゼロ」に踏み切れたのではないでしょうか。
『ビジネスの多角化』を進めている。
たとえばチャールズシュワブは、
売買手数料などの「コミッション収入」は、
トータルの売り上げの7%程度を占めるに過ぎません。
カストディ業務とは?
有価証券等を適切に管理し、
決済その他一切のバックオフィス業務を担う役割のこと。
再びWSJの記事より。
同社(チャールズ・シュワブ)が
管理する顧客資産は3兆7000億ドル、
うち1兆5500億ドルは
登録投資顧問(RIA)からの委託資産で、
同社は米国最大のRIA向けカストディアンとなっている。
はい、RIAとは
「Registered Investment Advisor」の略です。
顧客に投資助言を行い、
「投資一任契約」も付随するケースが多く、
顧客からの預り資産に対して
パーセンテージで「報酬」を受け取るのが一般的です。
投資アドバイザーの『バックオフィス機能』を、チャールズシュワブ証券は担っているのです。
株式の売買手数料『ゼロ化』は、証券会社が時代の流れの中で、手数料ビジネス(コミッション収入のビジネスモデル)から決別しようという意思の表れ。
長年、証券業界は
顧客に金融商品の売り買いをさせることで「収益」を上げてきたわけです。
その象徴が株式の売買委託手数料。
そういう「あこぎな商売」から足を洗います。という 宣言 に他なりません。
チャールズシュワブ証券のトップページ(サイト)を見ると、その具体的な『決意表明』が現れています。
わたしは以前、こうツイートしました。
米国チャールズシュワブ証券のサイト。
— カン・チュンド@インデックス投資アドバイザー🙋♂️ (@4649kang) August 29, 2022
投資商品の欄で「個別株式」より「投資信託」が上部に記載されている点、超重要❗️
日本の証券会社はいまだに「株式」「投信」の順ですよね。どのネット証券が最初にこの『順番』を変えるのだろう🤔🤔#パラダイムシフト pic.twitter.com/mlWQEsDeo3
米国のオンライン証券ではすでに、金融商品を「取引」させるのではなく、金融商品(投信・ETF)を「保有」してもらうという発想に転換しているのです。
わたしは「SBI証券」が遠くない将来、
『国内株式』と『投信』の順序を換えると本気で思っています。
カテゴリ:金融機関にモノ申す