インデックス投資全般

本日1月29日はETFが生まれた日です(祝!30周年)

2023年1月29日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

ETFとは Exchange Traded Fund の略称です。
直訳すると「証券取引所で直接取引されるファンド」となります。

シンプルに言えば、
ETFとは
取引所に上場する『インデックスファンド』のこと。




ですので、ETF = ほぼインデックスファンド という理解で問題ありません。

 

 

たとえば、S&P500指数に連動を目指すインデックスファンドも、S&P500指数に連動を目指すETFも、
その中身【ファンドの構成銘柄】は同じです
ということは?「期待リターン」もほぼ同じ。

 

 

えっ、ETFとインデックスファンドの中身が同じなら、そもそも「なぜ」ETFが必要だったの?

 

良いご質問です!

 

 

 

 

 

実はETFが開発されるきっかけとなったのは、1987年10月19日の『ブラックマンデー』でした。

 


米国ダウ平均が算出を開始した1896年以来、
一日で10%以上の下落は全部で6日ほどしかありません。

その一つがブラックマンデーでした。

 

1987年10月19日、ダウ平均は508ポイント下落し、
1日当たりの『下落率』はなんと22.61%に!

このブラック・マンデーの下落率はいまだに破られていないヒストリカル・レコードです。

 

 

暴落の原因は、
アメリカの財政赤字、貿易赤字の拡大、
またドル安でインフレ懸念が高まる中、政府が『政策金利』を引き上げたためとされています。



こういうとき、プロの投資家
大量の売買を執行できる「インフラ」を有しているので有利です。



(たとえば、ですよ)

1987年10月19日の午前9時37分に、

○○証券は、10億円分の株式を売却。
△△証券が、36億円分の株式を売却。

 

 

プロの投資家(機関投資家)はその日の売り注文の気配を見て、「これはただならぬ事態だ!」と、いち早く気づくことが可能でした。

 

(そしてこれは皮肉な結果なのですが)
自ら行う大量の「売り注文」が、
株価の下落に拍車をかけてしまいます。

 

 



ところが個人投資家、
とくに『投資信託』の形で資産を保有する人は
1987年の10月19日、なす術(すべ)がありませんでした。

 

なぜなら投資信託は
『一日に一回しか』値段が付かないためです。

 

 

 


仮に、です、午前10時過ぎに、
「うわぁ、なんかタイヘンなことになりそう」とあなたが気付いたとします。

実際、『市場平均』はどんどん下がっていくわけです。





 

 

 

 

ところが1987年ですから、まだネット証券はなく、あなたは証券会社にひたすら電話するしかありません。

 

「すぐにわたしの米国株式インデックスファンドを売ってください!」

 





 

ところが、投資信託の約定は、
その日マーケットが閉じたあとに確定する『基準価額』ででしか行われません。

 

 

結局、ブラックマンデー当日、
投資信託を保有していた個人投資家は
テレビのニュース画面を呆然と眺めるしかなかったのです。

 

 

 


換言すれば、

 

〇 市場平均への連動を目指し、
〇 かつ機動的に売り買いができるツールへの『潜在的ニーズ』が存在したということ・・。


これこそ、ETF誕生の遠因でしょう。

 

 

ETFは『株』の機動性と『投資信託』の分散効果を併せ持ったプロダクトであり、まさに市場参加者のニーズに応える新たな道具となったのです。

 

 

 

1993年の1月29日、
現存する最古のETFである
『スタンダード・アンド・プアーズ預託証券』

スパイダーS&P500 ETF(銘柄コードSPY)が、アメリカン証券取引所に上場を果たしました。

ちょうど30年前の話です。 ETFって意外と新しいツールなのです。

 

寒さ厳しいニューヨークで、
SPYの初日の売買高は100万口を超え、上々の滑り出しとなりました。





画像元:Wikipedia

 

 



 

しかし、次の日の出来高は約48万口に減少。

結局、同年2月11日までに1日の売買高は
2万口程度にまで落ち込んでしまったのです。


「ETF」というまったく新しいツールに対して、

〇 証券会社さんは?
「それは株じゃないよね・・」と囁き、

〇 投資信託の運用会社さんは?
「それは投信じゃないよね・・」と呟いていたのです。

 


実際、1990年代はまだ
ETFの「前史」と云うべき段階であり、

ほとんど世に普及していませんでした。

 

 

今では全く信じられないことですが2000年のはじめ、世界に現存するETFの数はたった30数本しかなかったのです。

 

 

ところで、
先述したSPYは「SSGA」
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズという運用会社が手掛けたETFでした。



別の運用会社として、2000年の5月19日、
「BGI」(バークレイズ・グローバル・インベスターズ)が

S&P500との連動を目指すIVVをはじめ4本のETFをローンチします。



この日、BGIは自ら運用するETFのブランド名を
『i シェアーズ』に統一したのでした。

 

 

 


2000年はちょうどITバブルが崩壊した年であり、マーケットはそこから数年間低迷を続けます(S&P500指数の年次リターンは、2000年、2001年、2002年と3年連続『マイナス』となりました)

 

ETFという低コストかつ透明性の高いツールが勃興するには、実は最高のタイミングだったのです。

 

 

同じく2000年の5月、i シェアーズブランドのETFが一挙に10本上場し、2000年の年末には、i シェアーズのブランドを冠したETFだけで55本を数えました。

 

今から振り返りますと、
ETFという金融商品の趨勢を決定したのは、
2000年当時のBGIの『英断』にあったと云えます。

 



それから遅れること1年、
2001年5月にようやくインデックスファンド業界の雄バンガードが、

最初のETF、バンガード・トータルストックマーケットETF(銘柄コードVTI)の運用を始めたのです。

 

 

以下は2017年時点の、米国上場ETFのマーケットシェアですが、

 

 

 


バンガードETFがもう少し早く誕生していれば、
ETF市場において、バンガードのひとり勝ちが実現していたかもしれません。

 

現在、米国だけで3000を超えるETFが上場しており、その種類もバラエティーに富んでいます。


 

 

ところで、

わたしにとってETFとは
最初に
本気で好きになった人のようなものです。


えっ!? 

 

実はETFの本も書いているくらいです

 

 

が、今では、フラットな審査眼を用いて比較を行い、ETFより通常のインデックスファンドがより優れた道具であると表明しています。

 

たしかに、継続コストについてはETFに軍配が上がりますが、ETFの分配金は課税され(外部に)吐き出されてしまうため、運用効率が(分配金を出さないインデックスファンドより)劣ってしまいます。

 

 

何より、資産を積み上げ、資産を取り崩す
個人の投資の「全工程」、すなわち、積立、取り崩しの作業において、全自動化ができるインデックスファンドの優位性は大きいと考えます。

 

 

それでも、ETFが誕生したからこそ、「このライバルには負けまい!」と、既存のインデックスファンドも、さらに切磋琢磨することが出来たのです。

 

ETFなくして、インデックスファンドの更なる発展はありませんでした。

 

いずれにしても、今から30年前の1993年の寒い日に、ETFがこんなにも普及することを確信した人は、ほとんど皆無だったと云えるでしょう。

 

道具に歴史あり。

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