投資で利益が出ても「悩みの森」に入ってしまうことがあります
2023年1月22日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
SNS界隈では、投資の喜怒哀楽が過剰に滲み出ます。
例えば「いつの間にこんなに利益が・・。」と、
「数字」を確認した際に、喜びとともに戸惑いを覚えるのは、決して珍しいことではありません。
以下、相談者さまの声です。
〇 「落ち着かないです。」
〇 「利益の分だけでも売ったほうが・・。」
実は・・
これみな、
「利益」が出ているがゆえのお悩みなのです。
投資で『悩みの森』に分け入ってしまうのは、
「損失」が出ているときだけではありません。
「利益」が出ていても、
(人によっては)けっこう厄介な問題になり得るのです。
冷静に考えてみますと、
その人にとってはじめての経験・・。
シンプルに言うと、
利益の存在に
まだ慣れていないから、
それ(利益)を目の前にすると、
どう対処してよいのか
分からなくなってしまうわけです。
ちょっと振り返ってみます。
たとえば直近では、
2014年や2017年や2021年が顕著だったと思います。
『カンさん。
利益の分だけでも売って、
またそのまま「つみたて」を続けるってどうなのでしょう?』
お気持ち、お察しします。
たとえば来月、
実りが小さくなってしまったらどうしよう?
と悩んでおられるわけです。
せっかく実った果実(利益)だから
【確保】したいというお気持ち、分かります。
次に多かったのが、
『カンさん。これだけ利益が膨らんだので、
ここでいったん売却して、
またイチから「つみたて」を始めるってどうなのでしょう?』
ん??
これも、
比較的マーケットが堅調なときによくいただく質問です。
わたしはこれを
『投資をリセットしたい症候群』と名付けています。
ひとは利益が出てもそわそわするもの・・。
このケースの場合、
相談者さまは「利益の大きさ」だけでなく、
投資元本プラス利益で
今まで見たこともない「額」に膨れ上がった、運用資産の「ボリュームそのもの」に戸惑われているのでしょう。
(繰り返しになりますが、)
はじめての経験ですから
ソワソワしてしまうのも無理はありません。
【利益がある状態】に慣れるには
それ相応の時間が必要なのです・・。
2000年代以降に社会人になった人たちは
投資の経験者でもない限り、
金融商品を保有して(結果)
「お金が増える」という現象に慣れていません・・。
下記は長期の「預金金利の推移」です。
画像元:青森銀行
よーく見てみると、
『1995年』が分水嶺になっています。
55歳とか60歳の人たちは、
かつて元本保証型の商品でも
【それなりにお金が増えること】を経験している世代です。
しかし、
今の若い人にとっては、
【預金 = お金を預けておく器(うつわ)に過ぎず、
お金が増える商品とはまったく思えないですよね。】
それだけ金融商品を保有して
利益が出るということに免疫がないわけです。
だからこそ、
数百万円ほどに運用資産が増え、
利益が数十万円にも上ったら、
落ち着かなくなってしまうわけで・・。
が、利益を前にして、悩んでいるのは「あなた」だけではありません。
実は「長い長いつみたて期間」の中でいえば、
今あなたは『ファースト・ステージ』にいるに過ぎません。
先ほど、
せっかく実った果実(利益)だから、
という言い方をしましたが、
この果実(利益)実は一度地面に落ちて、
(つまりは一度ゼロになって、)
土壌の肥やしになるんだと
考えておいたほうがよいでしょう・・。
35歳からつみたて投資を始めた「あなた」。
〇 45歳~55歳(セカンド・ステージ)
〇 55歳~65歳(サード・ステージ)
壮大に考えておいたほうが良さそうです。
ほんとうにあなたの肝が
据わっているかどうかが問われるのは、
運用資産が1000万円ベースを超えてくる『セカンド・ステージ』でしょう。
今、
あなたが30万円、40万円の利益で
ソワソワしているのは、
次のステージに備えた「練習」だと思ってください。
利益が増えたり、
また減ったり、
あるいは損失を抱えたり、
上記の『道のり』は決して平たんではないからこそ、
つみたて投資ではある種の「いい加減さ」が求められます。
実は、
引っ越ししてきて半年も経っているのに
「あら、まだあの荷物、
段ボールから出してないわ・・」
という人のほうが、
長期のつみたてに向いていたりするのです。