『株主優待』は投資家の目を曇らせる制度?
2023年1月6日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
『株主優待』ということばを
あなたも聞かれたことがあるはずです。
企業の株主になれば、
「配当金」が期待できますが、
これは文字通り「現金」であり、
ハードな『ご褒美』ですね。
それに対して「株主優待」とは、
ソフトな『ご褒美』と形容できるかもしれません。
よくよく考えてみますと、
「現金」そのものを送る『配当金』でさえ、
会社はさまざまな手段を用い、
コストをかけて、
すべての株主に送っているわけです。
それが、
自社製品であれ、
クオカードであれ、
おコメであれ、
『モノ』(株主優待)となると、
全ての株主にそれらを送るコストは「現金」以上にかかるはず・・。
株主優待は
日本独特の「接待文化」のように感じます。
この制度をなくせば、
〇(あるいは)配当金を増やせます。
一例ですが、
ヤフーは2005年に『株主優待制度』を廃止し、
配当金を支払うことを決めました。
あるいはモリト株式会社は2017年、
『株主優待制度』の廃止を決定。
それと同時に、
『配当性向』を30%から50%以上に引き上げることを決めました。
(※ 配当性向とは、
企業の『税引き後利益』のうちどの程度を
「配当金」に回すかという比率を指します)
わたしは『株主優待制度』が、
企業を純粋に評価する目を曇らせていると考えます。
山崎元さんの以下記事から引用してみましょう。
筆者は、
「投資のパフォーマンスが悪い場合でも、
株主優待があるからいいと思える」といった、
純粋な投資と、
優待による精神的な満足とを使い分ける心理が、
投資の心構えとして「好きではない」。
損をした場合の言い訳を
事前に用意するようなやり方では、
投資判断が甘くなりそうに思える。
たしかにそうですね。
ところで
ここまで読まれて、
「なんでカンさん。株主優待の話なんてしてるの?」と思われるかもしれません。
投資信託の保有者にも大いに関係します。
こんなふうに想像してみましょう。
TOPIX(トピックス)との連動を目指すインデックスファンドにしろ、コモンズ30ファンドにしろ、全世界株式インデックスファンドにしろ、
日本株式を多少なりとも保有するファンドは、
すなわち日本企業の『株主』になるわけで、
『優待』という名のご褒美を、じっさい受け取っているわけです。
自社製品とか、
クオカードとか、
おコメとかを。
投資信託の資産であれ、
年金基金の資産であれ、
そしてそのお金を、再びファンド資産に組み入れたりしているのです。
換金できないようなモノは
寄付することもあるのだそう。
もう毎回、毎回、
すごい手間と時間とコストがかかっているわけです。
そもそも論になるのですが、
あなたは一投資家として「投資対象」にいったい何を求めていますか?
プラスの成績ではないでしょうか。
投資の世界はシンプルで
分かりやすいです。
この『数字』が良すぎる場合、
わたしたちはある意味警戒し、
この『数字』が振るわなければ
「今の投資で合っているのか?」と自省するわけです。
(『数字』の中に
喜怒哀楽が詰まっている。)
そういう意味で、
例えばインデックスファンドに対する投資って冷めています。
インデックスファンドの保有者は、誰も『ファンド保有者優待』など求めてはいないはず・・。
わたしはいつも思うのですが、個別株式って、
そこに足を踏み入れたことがない者からすると、一種独特の世界です。← 悪い意味で。
単に、
どの証券会社を使っても、
どのくらいの株数の売買にしろ、
すべての投資家が、同程度に、最適注文を発注できるシステムを網羅的に備えればよいではないですか。
また単元株数はどうして100株なのでしょう?
また、株数単位だけでなく、金額ベースでも、株式を買ったり売ったりできる「システム」はやろうと思えば構築出来るはずです。
もう、
そんな前時代的な慣習は取っ払って、
誰にもわかりやすい制度に作り変えませんか?
最後に、アメリカには『株主優待』という制度はありません。
代わりに「配当金」を潤沢に出す企業はありますが、21世紀に入って大手テック企業の隆盛に伴い、同じ10億ドルの原資があるなら、「配当金」よりも「自社株買い」を実施する企業が増えてきています。
日本の企業もやがては、
株主優待「廃止」→ 配当金 → 自社株買いというトレンドの変化が起こる可能性が高いでしょう。