1860年、峯吉、咸臨丸、サンフランシスコ(投資の原点を覗いてみよう!)
2023年1月2日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
あなたは
「人生の一冊を挙げよ。」と言われたら、どの本を掲げますか?
私にとってそれは
司馬遼太郎氏の『アメリカ素描』です。
この本のおかげで
わたしは内なるアイデンティティの葛藤を解き、
19歳の時、アメリカに旅することが出来ました。
わたしは当時、本書を読んで、
自分がやりたいように生きていいんだ。」
と心底思えたのです。
(今でもこの「本」には感謝しかありません。)
書籍「アメリカ素描」の中では、
サンフランシスコの『日本人墓地の話』が出てきます。
「なぜそういう流れになるの?」については、ここでは割愛しますが、
もう10年以上前に
たまたま仕事で
シスコに行く機会があったため、
わたしはその日本人墓地に行き、
火焚きの峯吉の墓に参ろうと思ったのです。
(峯吉が果たして誰なのかは、
のちほど解き明かします。)
でもその前に・・・
司馬遼太郎氏は『アメリカ素描』の中で、
1853年のペリーの「黒船来襲」に関して、
日本における幕末の騒乱は
ペリーのドア破りからおこり、
十五年後に明治維新が成立した。
と記しています。
この『15年』とは、まさに日本にとって激動の時期なのですが、
(実は)江戸幕府は
ペリーショックからわずか6年後の1860年に、
遣米使節団の一環として「咸臨丸」をアメリカに派遣しています。
(歴史的に見てこれはとても意義深い。)
この船には艦長として勝海舟が乗り込みました。
また、福澤諭吉やジョン万次郎らも乗船します。
40日弱の航海を終え
サンフランシスコに寄港した咸臨丸ですが、
過酷な航海の中、病気になる人が続出します。
『アメリカ素描』では、咸臨丸の火焚きの峯吉(当時37歳)、富蔵(当時22歳)、そして源之助(当時25歳)のことが描かれています。
上記三人は、
サンフランシスコで悲運の死を遂げ、
日本の土を再び踏めずに、
現地の日本人墓地に葬られたのです。
(三人には名字がありません・・)
かの『日本人墓地』は、
サンフランシスコ郊外の「Colma」という場所にありました。
(ダウンタウンから車で20~30分の距離です)
そこは壮大なセメタリーでした。
大きなイタリア人墓地が近くにある中、日本人の墓地はその奥にひっそりと佇んでいました。
わたしが訪れた日は、
海のコバルトブルーをそのまま空に移したような青空で、心地よい風が吹いていました。
一つひとつ「お墓」を見ていくと、
意外にも1970年代や80年代のものも散見されました。
(キリスト教に改宗した人が多いせいでしょうか、)
教会形式の墓が多いのが印象的でした。
この日本人墓地の中で、
おそらくもっとも古い部類に入るのが
峯吉、富蔵、そして源之助の墓でした。
すでに文字の判読が難しいほど古くなっています。
はるか昔、
咸臨丸という船に乗り込み、
つらい40日弱の航海のあと、
病に倒れ異国の地で亡くなってしまった・・、
彼ら三人の無念を思うと、
胸が締め付けられるような気持ちになりました。
しかし、
わたしはここに、
1860年、咸臨丸に乗り込み、
サンフランシスコに着いた日本人たちの、
『驚きの大きさ』とは、
いかほどのものだったでしょう。
(当時はまだ、皆「ちょんまげ姿」だった!)
いつの世も、
ただならぬ『大きな変化』が
私たちの暮らしを翻弄します。
それまでの生活や慣習、
時には価値観までもが覆され、
生きていくために
時代の変化に対応することを、幾度も迫られてきたのが人間の歴史です。
その『旋回の大きさ』に、
21世紀を生きるあなたやわたしも(また)翻弄されているわけですが、
日本人が経験した『旋回の大きさ』に比べれば、
日本人はあのとき、
突如開いた【大海原】に驚愕しました。
しかし、怯むことなく、
突き進む道の「遠さ」に、逆に奮い立って、結果として、アジアではじめての先進国となったのです。
このことを、日本人はもっと誇るべきではないでしょうか。
幕末から明治にかけての、
決死のヒトの猛進力こそ、投資の原点なのです。
リスクを恐れず、自身のリソース(資源)を惜しみなく注ぐ行為・・。
司馬氏の「アメリカ素描」によると、
ペリーショック(1853年)からわずか3年後に、「自分達も、あの黒船を造ってみよう!」ということで、
佐賀藩、宇和島藩、そして薩摩藩の三藩が、
国産の蒸気船の建造を試みた旨が記されています。
なんと若く、
柔らかい「好奇心」でしょう・・。
そこには、
できるかできないかで悩むのではなく、
「まずはやってみる!」という精神が満ち溢れています。
日本人は本来、このような柔らかい思考を、持ち合わせているのです。
まずはやってみる!
「日本人墓地」サンフランシスコ郊外 Colma