ポートフォリオ運用

試練を迎えた伝統的な「株式60債券40」のポートフォリオについて(ウォール・ストリート・ジャーナルの記事より)

2022年11月18日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

ウォール・ストリート・ジャーナルで興味深い記事を見つけました。

 

『崩れ去る 伝統的な「株式60債券40」の投資戦略』

 

 

 

 

米国の投資の教科書で
繰り返し登場するポートフォリオとは?

「株式60:債券40」です。

アメリカのFP(ファイナンシャルプランナー)の大会に参加した時も、複数のセッションで例題として「60:40 Sixty Forty」の資産配分が示されていました。

 

 

今年(2022年)すでに
S&P500は配当込みでおよそ15%下落しています。
それに加えて債券は数十年ぶりの弱気相場に入っています。

 

投資調査・運用会社ロイトホールド・グループの分析によると、
米国株式に60%、米国10年国債に40%を投資したポートフォリオは、今年15%の損失を出しているのだそう。

(WSJの当該記事は11月13日付)

 

 

このままだと「株式60対債券40」の投資戦略は、1937年以来の最悪の年になりそうだと記事は伝えています。

 

一度「ゼロ」の地点に戻ってみましょう。

 

 

 

 

どうして「株式」と「債券」を組み合せる分散投資は、長く投資家を惹きつけてきたのでしょうか?

 

記事は『具体例』を挙げています。

 

・2000年のドットコムバブルの崩壊
・2008年の世界金融危機
・直近2020年のコロナショック(短期間ではあるが)

 

いずれの場合も市場の危機の際、
債券は痛みを和らげてくれたと伝えています。

 

 

以下グラフが興味深いです。

 

 

画像元:ウォール・ストリート・ジャーナル

 

 

今と同じようにインフレに苦しめられた
1974年を見てみましょう。

 

1974年、
S&P500指数(Stock)は配当込みで26%下落しました。

しかし、10年物国債(Bond)のリターンはプラス4.1%。

 

つまり株式60%、債券40%(60/40 stock/bond)で運用した場合、その年のリターンはマイナス14.2%となり、すべて株式で運用した場合に比べて(マイナス26%)、遥かに「まし」であったことが分かります。

 

 

 

2008年もそうです。

 

住宅市場は暴落し、
リーマン・ブラザーズは破産を宣言し、

 

議会は金融システムを救済するために前例のない救済策に合意した年、債券価格は高騰した。

 

 

ロイトホールド氏によれば、60%を株式に、40%を債券に投資した投資家は、全資金を株式に投資した投資家を23ポイントも上回ったということである。

 

 

ところが今年は、
アメリカの政策金利「引き上げ」があまりにも急であるため、

 

債券の価格は下がっていくいっぽうになり、
「債券投資」が報われず、

上記図表を再読するなら、

 

画像元:ウォール・ストリート・ジャーナル

 

2022年は今までのところ、

債券(米国国債10年物)100%への投資が
株式(S&P500)100%への投資より
若干損失幅が大きいのです。

ナント!

 

では、もう、
「株式60対債券40」の投資戦略には有効性はないのでしょうか?

NO、そんなことはありません。

 

現に、米国10年物国債はここ1週間程度、利回りが低下し価格が上昇しています(図表は直近5日間)

 

 

 

画像元:ウォール・ストリート・ジャーナル

 

政策金利の動向を如実に示す2年物国債は、
まだ利回りが上昇(価格は下落)する可能性が大ですが、

この先、アメリカの景気後退(リセッション)を織り込んでいくなら、10年物国債はさらに利回りが低下(価格は上昇)する可能性があります。

 

 

長い歴史の中では
ときに、

株価↓ 債券↓ が発生するものの、―そして稀に、株式のマイナスより債券のマイナスが大きくなる事があるものの、―

 

 

大勢としては『株式』と『債券』は二大資産として、互いが綱を引き合う、特性が異なるアセットクラスなのです。

 

 

ちなみに
株式は総体として右肩上がり(価格の上昇持続)が期待できますが、

債券はその価格が右肩上がり
(利回りがどんどんゼロに近づき、マイナスの利回りに踏み込む)

ということはあり得ません。

 

すなわち、
『債券投資』へのリターンは、
自ずとプラスの時期とマイナスの時期が、不規則に現出してしまうものなのです。

(このあたり、あくまで株式への投資がメインであるという割り切りが必要でしょう)

 

カテゴリ:ポートフォリオ運用

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