インフレには粘着性があります
2022年10月16日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
あなたがアメリカ人で、
もしも今、アメリカに住んでいたら、
朝の挨拶の話題は
天気のことではなく、
物価(モノの値段)のことになるかもしれません。
それくらい、
モノ、サービスの値段が上がり続けています。
アメリカの消費者物価指数(CPI)の推移
当初、
新型コロナウイルスや、
ロシア・ウクライナ戦争によって、
『供給側』に目詰まりが起こり、
それで物価が上がっているという解釈でしたが、
それはもう、最初の「きっかけ」に過ぎなくなりました。
私たち個人と企業と政府の、行動の『総体』を指します。
したがって、
あらゆる出来事が「身近」にあり、
たとえば『インフレ』という経済現象も、
個々人のカラダに、
日々刻み込まれるものです。
もしもあなたが母親を介護していて、
「紙おむつ」が大量に要るとしましょう。
(あなたはアメリカ人ですよ)
今だけでなく、3ヶ月、半年先の分まで「紙おむつ」を買っておこうという気持ちになりませんか?
このような一人ひとりの行動(先買い行動)が、インフレをさらに高進させます。
また、物価上昇 +8% で、
賃金の上昇が +5% なら、
実質的な賃金は目減りしていますから、
従業員としては断固『賃上げ』を要求します。
それは企業側から見れば人件費。
人件費も「物価」のひとつですから、
賃金の引き上げを通じて、商品(サービス)価格がまた上昇するわけです。
それからもう一つ。
アメリカでは「家賃」の上昇も顕著ですが、
新たに「賃貸借契約」を結んで
今、家を借りる人の家賃は、
今の物価上昇を反映しますが、
たとえば3年の賃貸借契約で、
2024年に契約が切れ、
同年に新たに契約を結び直す人にとっては、
(今は)物価上昇を反映する前の「家賃」であるので、総体としての家賃の上昇は、かなり遅れてやってきます。
粘着性が強い、つまりはなかなか下落しにくい物価項目といわれます。
冒頭に述べた通り、
供給側の目詰まりは(物価上昇の)「きっかけ」に過ぎず、
物価の上昇が自律運動を始めてしまっているのではないでしょうか。
もう一度、
「賃金」と「家賃」。
これらはモノの値段ではありません。
サービスの価格 です。
「モノ」から「サービスの価格」に移ったという事でしょう。
この深刻性を熟知しているからこそ、
アメリカのFRBは
政策金利の引き上げを断固行っていくと繰り返し表明しているわけです。
2022年は(実は)序章であり、『本章』が本格的に始まるのは、2023年からなのです。
「えっ、いったい何が始まるの?」
景気後退(リセッション)です。
物価上昇(インフレ)を抑え込むには時間がかかり、
痛みが伴い、
そして油断も許されません。
どなたかが仰っていました。
コロナが蔓延している間は株価は下がらない。コロナが終焉に向かうと株価は下がる。
その通りになってきたようです。
カテゴリ:経済よもやま話