銀行が顧客情報を、投信や保険の営業に利用するのは許されるのか?
2022年9月20日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
ビジネスの観点で述べますと、
「何千万円ものお金がそこにある」という情報には、とても大きな価値があります。
その種の情報は、
マンションの販売業者、
百貨店の外商部、
メルセデスベンツの営業マンなどにとっては、
喉から手が出るほど欲しいモノなのです。
「何千万円のお金がそこにある」という情報が、いとも簡単に手に入る会社があります。
それは、
『銀行』です。
「カンさん。証券会社の口座だって、
多額の入金があったらすぐに分かりますよ。」
はい。
でもその場合は、
もともと「投資に興味があって」
自ら証券会社の口座を開き、
お金を入金して、
自らの意思で「何かを買おう」としている類のお金ですね。
『銀行』は違います。
例えばA銀行に口座を持っているからといって、
別に保険や投資に興味がある人とは限りません。
銀行に口座を開設しているだけかもしれません。
ちょっと整理しておきましょう。
一つは「決済機能」を提供する顔です。
これは社会インフラと云えるほど重要な機能で、誰もが呼吸をするように利用しています。
(そしてもちろん、この公共のインフラを稼働させることが出来るのは、銀行そしてそこに付随する関連業者の皆さんの努力があってこそ。)
二つ目の顔は?
ちょっと想像してみましょう・・
〇 仮にあなたが
保有する終身保険を解約して、
1200万円の解約返戻金を受け取ったら・・
〇 仮に祖母から金(ゴールド)を相続し、
その金を売却して1000万円を受け取ったら・・
〇 田舎暮らしを始めるために、
自宅(不動産)を売却して
7000万円の決済代金を受け取ったら・・
〇 身内に不幸があり、
死亡保険金として1億1000万円を受け取ったら・・
その際の『受け取り方』は・・?
A銀行の口座にお金を振り込んでもらうはずです。
なぜならそれがいちばん「安全」でかつ「便利」だからです。
ところが、です。
あなたのA銀行の口座に、
「多額のお金が入金されたこと」が、
A銀行の人にはすぐに分かります。
別に「すぐに分かる」ことが悪いと申し上げたいわけではありません。
「すぐに分かること」は決済サービスが正常に機能している証拠であります。
『多額のお金が入金された事実』をもとに、
保険商品や投資信託の勧誘をしてもよいのか?という点です。
あなたはどう思われますか?
決済業務を取り扱う関係上、
大きなお金の出入りは「知り得てしまう」ことです。
問題は、入出金の途上で知り得た情報を、
自分たちが扱う商品を販売するために『流用』してもよいのか・・という点。
上記の『具体例』でいえば、
(もしも)あなたの口座に昨日多額の入金があったら、
冗談ではなく、
「今日、銀行から連絡があったりします。」← ホントです。
わたしは
銀行が決済サービスを提供する上で知り得た入出金情報をもとに、
保険商品や投資信託の勧誘を行うことには『制限』を設けるべきと考えます。
なぜならそれは「公平性」(フェアネス)に欠けるためです。
見込み客が多額の資金を有するという情報は、保険会社、証券会社、その他あらゆる業種のサービス会社にとって時間とコストとエネルギーを掛けて得る類の情報です。これら民間会社と公平を期すためにも『制限』が必要ではないでしょうか?
「カンさん。大丈夫。
ワタシにはそんな多額の入金なんてないから・・」
と油断しないでくださいよ。
もっとも気を付けるべきは、
あなたの「退職金」の入金なのです。
カテゴリ:金融機関にモノ申す