積み立ても長い道のりですが、取り崩しも長い航海なのです
2022年8月14日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
ビジネスとしての投資は、
顧客の資産を増やすことが目的です。
いっぽう個人の投資では、
資産を増やすことは「プロセス」の一部に過ぎません。
長い人生の中で、
「資産の積み上げ」+「資産の取り崩し」を『行程』として消化する必要があります。
理由はシンプル。
あの世にお金は持っていけないためです。
あるお客様はこう言われました。
投資信託を売却するって、
自分の投資成績を決めることなんです。
ファンドを積み立てるのは増やす途上ですから、ある意味ラクでしょう。
でも解約するとは、言ってみれば『総決算』です。
自分の投資のフィナーレのような気がして、なかなか踏み切れないんです。
お気持ちは分かります。
そしてこのお客様は、
投資に対して真摯に向き合っていることが分かります。
しかし、リスク資産の売却は
決して「フィナーレ」ではありません。
長い積立期が終わって、
つみたて投資の「終わり」の瞬間って、果たしてあるのでしょうか?
「劇的な幕切れ」!は、
残念ながらもはや存在しません。
あなたの投資は、だらだらと続いてしまうのです。
積立期において、
少しずつ資産を積み上げたように、
取崩し期でも、
(投資は続けながら、)徐々に徐々に資産を取り崩すだけです。
これは多くの投資家にとって
唯一進むべき道となるでしょう。
徐々に徐々に資産を取り崩し続けるのは、
長く長くなった人生に対抗するための『措置』であるためです。
あなたはいったん老後の生活に入れば、
「取崩し期」という、
新たな環境、新たな価値観に慣れていく必要があります。
今、総資産4000万円を預貯金のみで保有するとしましょう。
この4000万円の3%分「120万円」を、毎年単純に引き出します。
すると、約33年×120万円 となります。
上記を毎月ベースに直すと月10万円です。
およそ33年ですから
【月10万円×約400ヵ月】という式になります。
資産を取り崩し、
そのお金を使っていく歳月がいかに長いかが分かりますね。
実際は、
あなたは投資信託も保有しながら
「取り崩し」を続けますので(もちろん)資産はもっと長持ちします。
冒頭のお客様のお気持ちが、
分からないではないのですよ。
投資信託を『売る時期』を意識すると、
「万一ファンドを安く売ってしまったらどうしよう??」という不安につながります。
それは長い積立投資において、
「いつファンドを買いましたか?」
「ファンドを買った時期は?」が愚問であるのと同様です。
積立期に負けないくらい、
取り崩し期も長い航海となるわけです。
これは人生100年時代の宿命です。
少し思い出してみましょう。
積立の途上でも、ありましたよね。
高く買ってしまうことや、
円安時に何ヶ月もつみたてを続けたことも。
時には
マーケットを予測したい誘惑に駆られたことが・・。
あれやこれやとストレスに感じながらも、
雑音とやり過ごして、
あなたはコツコツ積立を続けてきたわけです。
持続的な作業であることを、
取崩し期も同様です。
資産を安く売る場面も、
円高時に売り続けるような場面も訪れることでしょう。
それもこれも
雑音と受け流して、
あなたはコツコツ規則的に取り崩しを続けるだけです。
あなたは『取崩し期』の練習を、『積立期』を掛けてやってきたわけです。
(二つを合わせたものが「生涯投資」です)
投資の前半(積立期)はどうでしたか?
もしもYESと思えるなら、
市場を信頼して、
投資の後半も資産管理を続けてください。
「積む」か「崩す」かの違いがあるだけで、
リスク資産を持ち続けるのは同じなのです。
上記骨太のコンセプトについて、以下書籍でも詳説しています。
カテゴリ:リタイアメント・資産の取り崩し