401(k)プランを安心して覗き見する方法とは?(ウォール・ストリート・ジャーナルの記事から)
2022年7月19日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
突然ですが・・
この10年ほどで
個人投資家の間に広まった
深刻な『習慣病』をご存じでしょうか?
それは
スマホで取りあえずチェックする病です。
この病は
それが「習慣病」であると認識しづらい点において深刻です。
今年前半、
米国のS&P500指数は高値から21%下落し
『ベアマーケット』入りしました。
(現在S&P500指数は年初来でマイナス19%程度です)
今は
アメリカの確定拠出年金(401(k)プラン)も、
ネット上の資産管理画面で
簡単に自身の成績がチェックできるため、
市場 → 下がった。
わたしの成績 → どうなった?
がすぐに分かってしまいます。
が、これが功罪になり得ると
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事
『How to Peek at Your 401(k) Without Freaking Out』
(401(k)プランを安心して覗き見する方法)
は伝えています。
要約すると、
市場が下落する中、
頻繁に自身の成績をチェックすると、
良くないアクションを起こしてしまう可能性が高まるということです。
バンガード・グループのシニア・ファイナンシャル・アドバイザー、ジュリー・ビルタ氏は、
市場が下落すると、
人々は不安になり、
残高を確認したくなるものです。しかし、それは逆効果になりかねない。
たしかに・・・。
あなたやわたしのような
普通の生活者にとって、
失うことの痛みは、
得ることの喜びの2倍程度に感じると、行動経済学的に言われたりします。
「頻繁に自身の成績をチェックすると?」
マイナスになっている状況を認識する回数も(また)増えてしまうわけです。
1929年以来、
S&P500指数は市場が開いている日の46%で下落し、
毎日残高をチェックする人は多くの悪いニュースにさらされることになった。
46%なんですか。
これは驚きです!
下の図表にもありますが、
「毎日」市場を見てしまうと、
「毎日」「毎日」チェックするうちの46%は
「ああ、今日も下落か・・」と嘆息することになってしまうわけです。
いっぽう、
「年に1度」しか市場の状況をチェックしない人はどうでしょう?
25%の確率で損失を自覚することになります。
つまり4年に1回くらい
「ああ、今年は下落なんだ・・」と呟くわけです。
それが下記図表の意味です。
画像元)ウォール・ストリート・ジャーナル
投資は基本『放ったらかし』にしたほうがラク。それは、損失を自覚する『回数』が減るからなのですね。
(当たり前ですが、
年に1度しか市場を見なくても、
毎日市場を見ていても、
市場の『値動き』そのものは全く変わりません。)
「頻繁にチェックすると、損失を見る頻度が高くなり、株式投資をするのが怖くなる」と行動経済学者のShlomo Benartzi氏は言います。
さらに興味深い話が上記記事では続きます。
ネットが普及する以前は、
401(k)の加入者は自分の残高を知るために
401(k)プランのコールセンターに電話するか、
四半期または年に一度の口座明細書(ステートメント)が郵送されてくるのを待つ必要があった。
また、取引を行うには書類を提出する必要があった。とBenartzi教授は言う。
なんとも牧歌的!
かつてはファンドを売買する、
また自身の資産残高、損益を知るだけでも
けっこうな「手間」が必要だったわけです。
その結果?
多少マーケットが乱高下しても、
投資家が能動的に資産状況をチェックしたり、ファンドの売り買いを行ったりすることは「稀」だったわけです。
わたしはこれを
『あきらめの長期保有』と呼んでいます。
米国の401(k)プランと違って
日本の確定拠出年金では
物理的に60歳以前にお金を出すことが出来ません。
いわば(米国以上に)
『あきらめの長期保有』状態に持っていきやすいわけです。
スマホでiDeCoや企業型DCにログイン出来る状況を作らない。ってどうでしょうか?
あなたは「賛成」ですか?
繰り返しですが、
毎日資産状況をチェックしたからといって、
ファンドの価格変動の仕方が変わるわけではありません。
(成績のチェックは)
あえてパソコンだけに制限する。
わたしはこれは重要だと思います。
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事は次のように伝えています。
バンガードが管理する401(k)プランの約500万人の参加者のうち、2021年に自分の口座をチェックした人は68%で、2012年の57%から上昇した。
平均して、モバイル機器を使用している人は2021年に20回見るのに対し、コンピュータを使用している人は10回だった。
本当にパソコンのほうが、
見る頻度が下がるのですね!
また同記事内ではバンガードのアドバイスとして、
「チェックする回数は最低年に一回。でも、四半期ごとを上回らないように。」という文言が添えられています。
スマホで
楽天証券の特定口座が見れなくても、
SBI証券のiDeCo口座が見れなくても、
マネックス証券のつみたてNISA口座が見れなくても、
特に不自由はないはずです。
(そもそも「それ」は日常生活の質を左右するほど至極重要なことなのでしょうか?)
あえてパソコンでしか見られないようにする。
資産チェックの『間隔』を空ける。
これこそ確定拠出年金を安心して覗き見する方法です。
カテゴリ:投資家の感情リスク, 確定拠出年金(iDeCo・企業型)