下がったから「ココで買い増しだ!」は悪魔の囁きです
2022年5月12日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
マーケットが段々下がってくると、
『買い増し』をしたくなるのはまっとうな心理です。
「下がる」とは
安く買えることであり、
投資家にとっては紛れもない「チャンス」となります。
ただ、難しいのは、
『下落相場』がどの程度続き、
それがどのような軌跡を描くかは(前もって)誰にも分からないこと。
これから短期的にマーケットがどのように推移するかは、わたしにも皆目見当がつきません。
ところでSNS、メディアなどの各種情報は
下落相場の『発火点』をことさら強調します。
例えば米国ダウ平均が高値から15%程度下がっただけで、「暴落だ!」と言って書き立て、騒ぎ立てます。
斎藤茂太さんの
「楽観的になりたければ、客観的になることだ。」の言葉通り、
米国ダウ平均は
わたしの表現でいえば、
「まだ下がり始めたところ」です。
(約マイナス13.3%)
(ナスダック総合指数のほうは
暴落に向かって着実に近づきつつありますが・・)
問題は『ここから』です。
仮に、今の地点から
米国の主要株価指数がさらに10%、15%程度下がったとしても、
SNSやメディアはもはや当初と同じトーンではこの事実を伝えません・・。
『下がっている!』という事実の鮮度が落ち、
『下がっていくこと』に慣れてしまうためです。
ココ↑ 伝わっていますか?
この現象は
過去の大きな下落局面で何度も繰り返し起こっています。
私たち投資家は、
マーケットの下落が鮮明になった『初期の頃』に、
ついつい大きなアクションを起こしてしまいがちになるのです。
なぜなら、それは現象として劇的だから。
直近の例を挙げてみましょう。
2020年、コロナショックが起こって
まさに株式市場が坂道を転げるように10%、15%と大きく下げた、2020年2月の第四週ごろ。
あるいは2007年から2008年にかけても好例です。
実際のマーケットは
すでに2007年から(だらだらと)下がり始めていました。
当時『サブプライムショック』という呼ばれ方をしていました。
この2007年時点で「買い増し」をした人たちは、
この下落が、
グローバル金融危機のほんの『序章』であったとはゆめゆめ思っていなかったでしょう。
あるいは2000年のITバブル崩壊の例では、
S&P500は2000年、2001年、2002年と『3年連続マイナス』となっています。
(こちらは「じわじわ」「ゆっくり下落」の典型です)
繰り返しですが、
下がったときに「チャンス」と思えることは良いことです。
しかし『最悪に備える』という意味では、
(私たちの予想よりも)
長く続くものだと思っておいたほうが賢明ではないでしょうか・・。
自身の肌感覚と感情の起伏のみで、
(なんとなく)大きく下がったから、
大きな節目のような気がするから、
「ココで追加資金を入れよう!」という行動は、安直すぎるかもしれません。
実際、明日、そして来週の月曜日と
「50万円」「50万円」スポットでファンドを買い増ししたとしましょう。
さらに下がった局面で、
また『資金』を入れたくなるものです。
(繰り返しですが基本、下がった時に買うことは、投資家として褒められるべき行動なのですよ)
そして、またさらに下がったら(買いたくなる?)
(もっと下がれば)さらに買いたく・・・
上記のように行動してしまうと、あくまで仮の話ですが、ほんとうの『暴落状態』になったときに、資金がすでに枯渇している、ということも起こりうるわけです。
誰のことを言っているかといえば、
ワタシです(汗)
わたし自身、
ITバブルが崩壊した2000年の5月以降、
なけなしのお金、数十万円を、
当時10万円、10万円、10万円と分けながら、
マーケットが下がるごとに
追加投資していって、
痛い目にあったことがあります・・(-_-;)
高値から15%程度下げたくらいでは、
別に無理して買い増ししなくてよい。
もしも暴落に至らなかったら、
「ラッキー」と思って、通常のつみたて投資を続ければよい。
もし「暴落」が本当に起こったら?
その時は
「つみたて金額」を増やせばいいと思います。
※決してスポットで追加投資をしないこと!
(余裕資金の多寡にもよりますが、)
わたしは通常の「つみたて金額」の
3倍、5倍に設定してもよいと思います。
万一暴落状態が長引いたとしても、規則性を保ちながら、ある程度の期間、多めの資金投入を続けることが出来ます。
繰り返しですが、スポット増額はくれぐれもなされないよう・・。
カテゴリ:インデックス投資全般, 投資の発想法