投資信託と相続(税務署から見た視点と、あなた個人の視点は別物です)
2022年4月22日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
相続にまつわるご相談は決してメインではありませんが、
(サブ的な案件として)頻繁に頂戴します。
お話を伺っていますと、
どうも『ふたつの事象』を混同している人が多いと感じます。
相続税算定上の視点。
リスク資産を受け継ぐあなた自身の視点。
まずは『相続税』という観点から。
相続税がかかるか否か、故人の資産を評価するわけです。
その評価の物差しを『相続税評価額』といいます。
特に、預金、上場株式、投資信託の場合、
相続税評価額の決まり方はシンプルで、
→『時価』です。
相続が発生した時、
つまり被相続人が亡くなられた日の、
投資信託の時価、
すなわち「基準価格」が相続税算定上の評価額になります。
亡くなった日の『時価』ですから、
故人がそのファンドをいくらで取得したとか、
含み損になっているとか、
含み益になっているかなどは、
「相続税」の評価に関しては
関係がないわけです。
ココ、伝わっていますでしょうか?
単純に株式市場が高騰していれば、
同じAファンドでもその『時価』が上昇し、
(その時相続が起これば、)
相続税算定上の評価額が高くなることに。
同じAファンドでも、
株式市場が暴落していれば『時価』は下落し、
(その時相続が起これば、)
相続税算定上の評価額は低くなることになります。
これが、
税務署が『相続税』という視点で見た景色です。
では次に、
このAファンドを受け継いだ、あなたの「視点」です。
あなたはお父様から
Aファンド「2000万円分(相続発生時の時価)」を相続したとしましょう。
ふつうは故人が開いてた証券口座と
同じ会社の証券口座を開かされて、
Aファンドの名義を、
お父様からあなたに移転する手続きが取られます。
名義が移転した瞬間から、
あなたがAファンドの価格変動リスクを負うことになります。
純粋にあなたが保有する『リスク資産』となるわけです。
ふつうにファンド価格はアップダウンしたりします。
が、このAファンドを持ち続けている限り、
あなた個人に課税がされることはありません。
「この投資信託、売りたいなぁ」となった場合です。
この場合、一部の例外を除いて
すでに相続税云々とは関係がありません。
(あくまで)あなた個人の資産の売却となります。
しかしここで初めて、
お父様がAファンドを『いくらで取得されたか』が問題になるのです。
なぜなら、
被相続人の『取得価格』を、相続人が引き継ぐためです。
仮にお父様がAファンドを1000万円で取得されていて、
あなたがAファンドを2500万円の時に売却すれば、
「1500万円」の利益に対して課税されます。
↑相続税そのものとは別の事柄です)
先ほどの話題は、
・お父様が遺した資産の相続税算定上、
投資信託を「時価」で評価するという話でした。
今は?
あなたが保有する
・投資信託の売却益に関する課税の話です。
このふたつは別の事象なのです・・。
ちなみに『つみたてNISA』で運用していたファンドを相続される場合、
例外的に被相続人の取得価格を引き継がずに、
相続時の「時価」でファンドを引き継ぐことが出来ます。
ただし、あなたのつみたてNISA口座には引き継げません。
あくまで、
相続発生 → 被相続人のファンド(つみたてNISA口座)→ 特定口座に払い出され → あなたの特定口座にファンドが引き継がれることになります。
カテゴリ:100年ライフプラン, 投資信託あれこれ