バンガードETF、VTの経費率を年0.07%に引き下げ!(バンガード社の会社構造のヒミツとは?)
2022年2月28日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
VTをはじめ、18本のバンガードETF(ミューチュアルファンド含む)の、年間経費率『改定』が発表されています。
毎年の「桜の開花予想ニュース」のように、
当然のこととして受け取ってしまいがちですが、
継続的に『年間経費率』を下げ続けるって
スゴイことです。
(注:今回のリリースでは一部コスト引き上げのETF、ミューチュアルファンドも含まれます)
本日代表例として挙げるのは、
「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」(VT)です。
当該ETFの『経費率』が、とうとう年0.07%まで下がりました。(それだけではありません。VWOもVSSも、VEUもそしてBNDXもコストが引き下げられています!)
VT(全世界株式ETF)は2008年に米国で設定され、
1年後の2009年6月11日、楽天証券にて念願の『取扱い』が始まりました。
「えっ、ウソ!」
「ホントです。」
画像元:楽天証券
今回のバンガード社のプレスリリースに戻ってみましょう。
次の記述に注目です。
The firm continues to return value to investors through lower fund expenses on its path to returning $1 billion in cost savings to shareholders by the end of 2025. The changes reported today in prospectus filings align to funds with fiscal years ending October 2021 and represent $34.2 million in net savings for investors.
当社は、2025年末までに10億ドルのコスト削減を株主に還元することを目標に、
ファンド費用削減による投資家への価値還元を続けています。
本日、目論見書提出により報告された変更は、2021年10月決算のファンドに適用され、投資家にとって3420万ドルの純節約に相当します。
DeepLによる翻訳)
「すでに2025年末のことまで考えてる・・・・。」
この、
投資家に『価値の還元』を目指す姿勢は、ある意味「桁外れ」です。
たしかにETF、インデックスファンドのビジネスは
「純資産額」が大きくなればなるほど、
(運用の中身は同じですから)
『コスト』の引き下げがしやすくなります。
が、
バンガード社の場合、
実はそれだけではないのです。
持続的なコスト引き下げを可能にしているのです。
??
例えば国内の生命保険会社さん、ご存じですよね?
(ニッセイとか、明治安田とか、住友生命とか・・)
たとえば、
明治安田の正式名称は、
明治安田生命保険相互会社です。
「えっと、相互会社って?」
会社の「社員」になっている会社形態です。
(実は)バンガード社も
それに似た会社形態を持ちます。
(※ 余談ですが、バンガード創設者
ジョン・C・ボーグル氏がこの「相互会社形態」を目指したことは画期的だと思います)
バンガードのファンドを保有する人
(ファンド保有者)が、
換言すると、
バンガードという会社は、
ファンド保有者以外によっては「所有」されていないということ。
つまり?
つまり、
『外部の株主』が存在しないのです。
ちょっと想像してみてください・・。
『外部株主』がいなければ
その人たちのために「利益」を出したり、
「配当金」を出したりする必要がないので、
ファンド保有者のほうだけを向いて経営ができます。
ココ、伝わっていますか?)
わたしよりも数倍、
このスキームについて詳述した記事を、
2012年3月に日本経済新聞社の
田村正之さんが書かれています。
以下、同記事からの引用です。
「同社は資産が大きくなって収入が増えて
コストを上回ってくれば、
それぞれの投信の決算期ごとに、
その分、エクスペンス・レシオを引き下げて
投資家に還元し続けている。
『かかったコスト(実費)だけしかもらわない
実費経営がバンガードの基本』(バンガード・インベストメンツ・ジャパンの加藤隆代表)なんだ」
※ エクスペンス・レシオとは経費率のこと。
※ 加藤隆代表は当時(2012年時点)
画像元:日本経済新聞
来年以降も、
VTをはじめ
バンガードETFシリーズの経費率は逓減を続けていくことでしょう。
(ホントはすごいことなのに)
それを当たり前に
粛々と実現していくバンガード社の姿勢には頭が下がる思いです。
最後に、実質「VT」を投資先にしている、
「楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型・均等型・債券重視型)」などの国内設定の投資信託も、
VTの『経費率』引き下げに伴い、ほんのわずかではありますが、
きっと運用管理費用を引き下げてくれるはずです。
(本日の記事は、投資信託をお持ちのあなたにも関係あるお話なのですよ(^^)
カテゴリ:インデックス投資全般