インデックス投資全般, 指数のお話

MSCI ACWI指数でどんどん日本株の比率が下がっています

2021年12月2日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

今日は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を保有する人に影響があるお話です。

当該インデックスファンドは
MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)という『世界株指数』と連動する値動きを目指します。

 

MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)って?
日本を含む50ヵ国の国々の株式を内包する「全世界株式のモノサシ」です。

 

 

ブルームバーグの記事
日本から逃げ続けるMSCI運用資金-きょう2000億円流出と試算』から引用してみましょう。

 

みずほ証券の試算によると、

 

MSCIのSAIRで代表的な指数である
ACWI(先進国・新興国)やWorld(先進国)での日本の比率が低下し、
資金が純流出となるのは20年5月以来、4回連続。

 

今回の見直しでACWIの日本比率は
直近5.71%から5.65%へ下がる。
新型コロナ前の19年11月の見直し後では7.35%だった。

 

えーっと、
MSCI ACWI指数における
日本株式の比率が5.65%に下がるって、

どうしてこんなことが起こるのでしょう??

 

 

ちょっと整理してみますね。

ふだん私たちは
『市場平均』と同じ値動きになるよう運用される
= インデックスファンド!と理解しています。

 

では、その『市場平均』の中身を作っているのは?

 

指数算出会社です。
この場合「MSCI」という会社になります。

MSCIという会社が作り、
そして定期的に更新される「市場平均」

具体的にはMSCI ACWI指数に連動する値動きを目指すのが、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」なのです。

ココ、大丈夫ですか?

 

 

MSCI ACWIという指数は50ヵ国の国々の株式を内包するため、指数算出会社(MSCI)はまさに鳥の目で、

それぞれの国ごとで、
『指数』に組み入れる会社、組み入れない会社を定期的にジャッジ(判断)しています。

組み入れ銘柄(株式)の入れ替えがあるわけです。

 

これが、MSCI社が毎年5月、11月に実施する『銘柄の定期見直し』です。

 

 

さて、この11月の見直しでは何が起こったのか?

先ほどのブルームバーグの記事
11月12日に発表されたMSCIの「銘柄・定期入れ替え」で

日本株式での新規採用が2銘柄
除外が15銘柄だったと伝えています。

指数から外れてしまった銘柄のほうが多いのですね。

 

 

これだと『指数』との連動を目指す運用を行う機関投資家などは、日本株式の売却を強いられることになります。

そのいっぽうで、
除外銘柄よりも新規採用銘柄のほうが多い国も、もちろん存在するわけです。)

 

日本株のMSCI指数採用企業の「減少」は今年だけではありません。

この10年のスパンで見ても、
MSCI指数に採用される日本企業は、

指数から除外される企業のほうが
指数に新規採用される企業よりうんと多くなっている現実があります。

 

画像元:ブルームバーグ

 

このため、MSCI ACWI指数の中で、
日本株の比率がどんどん下がっているのです。

これはイコール、
『スリム全世界株式』の中で、
日本株の比率が下がっているということ。

 

そして、日本株の比率が下がるということは?
どこかの国の比率が上がっている。ということです。

 

世界は残酷です。

 

 

『全体』から見た、
日本という『部分』の、比率低下なのです。

 

もしもあなたが『全世界株式』という投資対象を知らず、
「日本株」を買うことがすなわち『全体』だと思っていたらどうでしょう?

あなたはたった一つのの六角形の穴の中で、
「これがワタシの投資対象だ」と悟ることでしょう。

 

 

インデックスファンドを求めるなら
せいぜい日経平均株価に連動するモノにするか、
TOPIX(東証株価指数)に連動するモノにするか?と悩むだけです。

が、しかし、
これは小さな小さな、閉じられた世界の出来事なのです。

 

 

 

「全世界株式インデックス」という投資対象が真にすぐれているのは、
シビアに変化し続ける『全体』を
明瞭に見せ続けてくれる点です。

 

投資の思考プロセスにおいて、
日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)という市場のモノサシをまず思い浮かべてしまうと、小さな『部分』に固執してしまうことになります。

もうココから、卒業しませんか?

 

あなたの身体は日本から離れられません。
稼いで(そして)使うお金も、基本「円資産」です。

だったら、長く置いておけるお金のほとんどは外貨建ての株式や債券でも、資産全体から見ればいびつなバランスにはならないはず。

 

 

『全体』を見通すとはどういうことか?
世界50ヵ国の株式(50の六角形の穴)の中で、
自分の国の株式を、ほんの『一部』と自覚することです。

 

今後も、
日本株が減ったり、インド株が増えたり、ポーランドの株が増えたり、スペインの株が減ったり、

「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の構成銘柄数は、そして国ごとの比率は、変化し続けます。

インデックスファンドとは「生き物」なのです。

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