長く忘れていた言葉、それは「インフレーション」
2021年10月17日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
タイトルの通りです(笑)
私たちは物価上昇(インフレーション)という言葉を、長く忘れていました。
特に40歳以下の人は
モノの値段が継続的に上がる、
自身の賃金が持続的に上昇するという経験が乏しいため、
上記ことばに対して、
ちょっとした警戒心をお持ちかもしれません。
まずは【誤解】がないよう・・。
決してネガティブな言葉ではありません。
逆に物価上昇という言葉は「希望の灯」です。
人類の歴史はインフレーションの歴史でした。
ヒトはその類まれな創造と工夫により
すぐれたモノ(道具)を生み出してきました。
余剰が投資を生み、さらに優れたモノ、サービスを編み出し、世の中がより豊かになるという期待を生みました。
人はより大きな対価を支払ってモノ・サービスを購入し、そこからまた余剰 → 投資 → 技術革新 → 新しいモノ・サービスへと循環してきたのです。
(結果、物価は上昇し続けました・・)
程よい物価上昇には2つの利点があります。
物価上昇が恒常的であると、
私たち消費者は必要なモノを
来年ではなく「今買っておこう」と思います。
なぜなら
来年、再来年になればそのモノの値段が上がってしまうからですね。
適度なインフレーションは、
経済が円滑に回っていく潤滑油となります。
デフレ気味の日本ではずっと消費が低迷しています。
物価上昇が恒常的であると、
借り入れを起こして大きな買い物をしようという動機づけが生まれます。
たとえば住宅。
一例ですが、
1000万円の自己資金で「3000万円」の借り入れを起こし、
4000万円の家を買ったとしましょう。
物価上昇が年に3%ずつ10年に渡って続くと、
モノの値段は10年後今の1.34倍になっています。
「3000万円」のままであるわけです。
(支払い利息などは考慮していません)
企業の設備投資も同様です。
将来の売り上げ向上のために、
「今」「大きく」お金を借りておこうというインセンティブが生まれます。
インフレが続く世の中では
借り入れをして「財布の中身」を膨らませるマインドが醸成されるのです。→ 結果、経済のパイは大きくなっていきます。
このあたりについて
レイ・ダリオ氏の秀逸な動画があります。
先ほどわたしは
『程よい物価上昇』と述べましたが、
今どうして、物価上昇(インフレ)が問題視されているかというと、それが「急激」かつ「過度な物価上昇」につながる恐れがあるためです。
エネルギー価格に端を発した「高めの物価上昇」は、
すでに欧米諸国のあちこちで観測されています。
ちょっとイメージしづらいかもしれませんが、
日本でもこの冬、
物価の上昇を体感し始めることになるでしょう。
いや、すでに先行して
価格が上がっているモノ(財)がありますね。
広義に捉えればモノ(財)の価格であり、一般材に先んじて上昇しているとも云えます。
今回の『物価上昇』の発端はコロナ禍に伴う、異次元的な金融緩和と、歪んだ需要と供給のバランスですが、
株式の歴史的な上昇も
世界的な住宅価格の高騰も、
あなたもわたしも心のどこかで、
「どうして株も不動産も暗号資産も、こんなに上がっているのだろう?」と解せない気持ちを抱いているはずです。
物価上昇には冷徹な一面もあります。
それは、資産の価値が上昇しているのではなく、
お金の価値(購買力)が減少している現象と捉えることも出来る点です。
カテゴリ:経済よもやま話