投資の発想法

投資商品は「買う」ではなく「持っています!」(短期と長期の果てなき攻防)

2021年9月4日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

長期投資のコツは、
意外にちょっとした「日本語」の使い方にあったりします。

いわく、
インデックスファンドを「買う」ではなく、
インデックスファンドを『持つ。』

突然ですが、
あなたはハロルド・エバンスキー著
『ウェルス・マネジメント』という書籍をご存じですか?


 

同書は資産運用を専門とする
ファイナンシャルプランナーにぴったりの実務書です。

「わたし、持っています。」

もちろん個人投資家が、
一歩進んだ資産管理を実践するための実用書にもなり得ます。

 

冒頭に、著者の格言が載っており、
それがこちら。

 

短期投資を望む顧客はグル(教祖)を求め、
長期投資を望む顧客は賢者を求める。
グルはいない。

 

このことばは、
短期と長期投資の本質的な違いを突いています。

ひと言でいえば、

 

〇 短期投資は 熱狂 であり、
〇 長期投資は 現実 なのです。

 

伝わっていますか?

 

 

よく、
○○ファンドを「買う!」という言い方をしますね。

投資商品を『買う』と表現すると、
その対語として『売る』という言葉が想起されます。

英語でいえば、
「Buy」と言うから
「Sell」が浮かんでくるわけです。

 

『買う』という行為を
投資という行いだと勘違いすると、

当然『売る』という行為も(投資だ!)と意識することになってしまいます。

これが「短期投資」のコンセプトです。

 

 

ちょっとクルマの話をさせてくださいw

 

クルマも、最初は当然『買う』わけですが、

 

「わたしクルマ持っているわ。」というように、
それを所有している「状態」でふつう表現します。

 

「ぼくクルマを買っています。」とは言いません。

 

あるいは尋ねるほうも、
「あなた、クルマ買っている?」とは聞きませんね。

「あなた、クルマ持ってる?」と聞くはずです。

投資も同じでしょう。

 

投資商品は「買っていますか?」と聞くのではなく、
「持っていますか?」と尋ねるべきなのです。

『Buy』ではなく『Hold』。

 

投資をする、とは、
商品を「買う」「売る」という行為を指すのではなく、
投資商品を『長く持っている状態』を指すわけです。これが「長期投資」のコンセプト。

 

なんとつまらない!

 

また「長期投資」とは単に
投資商品を「売ること」を、先延ばしにしている状態に過ぎません。
(あまり『持ち続ける!』を意識しないほうがよいのです。)

 

 

ところで米国でも日本でも、
個別株に関しては売買の委託手数料が間もなく完全に「ゼロ」になります。
投資信託に関しても、購入時の手数料は限りなく「ゼロ」に近づいていくでしょう。

そうすると?

 

そうすると、
『買って』『売る』という取引がよりしやすくなり、人は「短期投資」に誘引されやすくなるかもしれません。

 

あなた自身も「短期投資」に溺れないよう注意が必要です。

 

短期投資では「価格」を見ます。「価格」に気持ちが左右されます。

自分が主人公になって
華麗な『取引ゲーム』をうまく立ち回ろう!という気持ちになります。

(面白くワクワクもしますし!)

 

いっぽう長期投資は「価値」が醸成されるのを待つだけです。
主人公はマーケットのほうであり、あなたに特段面白いことが起こるわけではありません。

退屈で平板な日々が続き、あなたはただリスク資産を積み上げ、売却を繰り延べするだけです。

面白さの綱引きでいえば、短期投資の圧勝でしょう。

ただ、たとえば『中期投資』くらいまでの段になると、
(これはわたしの体験談ですが、)

相談者さまと面談をしていて、
6年、7年を超えてリスク資産を『持っている』人は、

投資商品と比べて
「自分」が優位に立っていると意識し始めています。

 

保有するリスク資産が1億円になっても、
明日も会社に行って普通に仕事ができる状態。と言えばわかりやすいでしょうか?

 

 

英語に「overcome」がありますが、
これは『打ち勝つ』という意味です。

リスク資産の価格だけを見て、その上下に引っ張られてそわそわする状態を断ち切り、売る、買うという誘惑にも打ち勝って、

あなたのほうが「リスク資産」を手なずけ、
コントロールし、

あなたが平穏な状態を保っている・・

これこそ、長期投資をしている状態なのです。

 

 

決してつまらない行為ではなく、
ただ持っているだけ、でもなく、

実は長い時間をかけて
あなたと投資商品が壮絶な陣取りゲームを行い、
最終的に「あなた」が「リスク資産」を制するまでの長い時間こそが『長期投資』なのです。

Buyではなく、Holdしている状態、それが投資をしている、です。

カテゴリ:投資の発想法

おすすめの記事