「ライフセトルメント」米国では生命保険契約が売買されている?(リバースモーゲージとの対比も含めて)
2021年8月6日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
たしかデンゼル・ワシントンが出てくる映画の中で、
生命保険を売買するくだりがありました。
「アメリカってビジネスライクな国だなあ・・」と思いました。
米国では、
生命保険契約の売買が
実際に行われています。
これは「ライフセトルメント」と呼ばれます。
たとえば、
わたしが1億円の保険金額の
『生命保険』に入っているとしましょう。
その契約そのものを
わたしが生きているうちに、
第三者(投資家)に売却するわけです。
(※ ちなみに日本では、このようなことは出来ません)
アメリカでは
『生命保険契約』という商品に対して、
数多の売り手、買い手が存在するため、
保険契約を売買する『マーケット』が厚みを持って成立しています。
解約返戻金をもらうというチョイスもあるじゃない。」
はい、それはそうです。
しかし、保険会社に解約を申し出て、
「解約返戻金」を受け取るより、
市場で保険契約そのものを売却したほうが
実入りが大きいという現実があります(あくまで米国での話ですが・・)
※逆説的にいえば、
生命保険会社がいかに「解約返戻金」を低く設定しているかという証左でもあります。
ところで、わたし(53歳)が
1億円の生命保険に入っていて、
あなたは果たして6,000万円で買いますか?
どうします?
おそらくNO、ですよね。
なぜなら、
わたしは(おそらく)まだまだ長く生きるでしょうから。
では、
わたしが今年72歳ならどうでしょう?
1億円の保険契約を、
6500万円なら買います?
8000万円でも買いますか・・?
買い取る側としては、
『精査』を行い、
買い取り額を算出する必要があります。
わたしの、
〇 今の健康状態、居住状況。
〇 病歴や職歴や、家族関係その他。
(親や祖父母の死亡年齢も調べられることでしょう)
『あと何年くらい生きそうか・・』を
数値化して、インフレ率も考慮し、
買い手側の「保険料の負担(もしそれがあるなら)」も計算して、
適正な【買い取り額】を算出するわけです。
保険契約の買い取り額は、
契約を売る人(わたし)が、
年老いていればいるほど、高くなるわけです。
仮にわたし(72歳)が、
【あと13年と6ヶ月で死ぬだろう】と計算されたとします。
買い手にとっては、
これは『投資』に他なりませんから、
わたしが
13年と6ヶ月よりも「長生き」すれば、
投資の回収にそれだけ時間がかかり、
かつ、リターンも減ってしまうわけです。
逆にわたしが、
13年と6ヶ月より「早く」死ねば、
それだけリターンが増し、
資金も早く回収できます。
ハイ、そういった類の商品なのです。
ちょっと寒々としますが・・。
同じく【人の死】を利用して、
考え出された金融商品に
『リバースモーゲージ』があります。
(これは一種の「不動産担保ローン」です)
通常は、ローン利用者の死亡によって契約が終了し、
その時点で担保となっている不動産を処分することで、
元利一括で「借り入れ」を返済する制度のことです。
こちらは、
「ライフセトルメント」に比べると、
ずいぶん穏やかな取引ではないでしょうか。
また定期的に、担保価値の再評価が行われることに注意が必要です。)
さまざまな考えがあると思いますが、
不動産を『生きている間に利用するだけの空間』と割り切れば、
「リバースモーゲージ」によって
(自分の家に住みながら)お金を借り、
セカンドライフをより楽しく暮らすことも可能になります。
また、相続のとき、
不動産が存在しなくなると、
資産の継承もずいぶんシンプルになるのでは?
(昨今では、親の家を引き継ぐことを望まない子どもさんも増えていますし。)
「ライフセトルメント」
「リバースモーゲージ」に限らず、
資本主義の世の中は、
あらゆる需要を「商品・サービス化」しようとする、
強力なインセンティブがあります。
(ちょっとSF的な妄想が入りますが、)
「忙しくて時間が足りない人」が
『時間』という資産を売買し始めたら、
世の中どういうことになってしまうのだろうと考えることがあります・・。
カテゴリ:投資の発想法