eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)は、冷酷でハードボイルドな投資信託?
2021年5月12日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
私たちは毎日、
何を食べようか、どこに行こうかと、
もう目に見えない選択を繰り返しています。
ひとつひとつ「決断し」「選んで」いくことが
まさに生物として『生きる』ということ。
資産運用の世界でも
さまざまなタイプの投資家が「何を選ぼうか?」と、
日夜さまざまな選択を繰り返しています。
ところで、
インデックスファンドが運用のフィールドで異彩を放つのは、
それが基本『選ばない投資』だからです。
・・選ばない?・・
たとえば、
日本の株式ひとつ取っても、
魅力的な会社がたくさんある中、
わざわざ「何も選ばずに」
市場全体を「冷めた目」でざっくり保有してしまう・・。
では、eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)とは?
ご覧の通り、
すべてまんべんなく選んでしまっています。
ということは?
まったく・何も(意図して)選んでいない。と同義なのです。
資産ひとつ取っても「これだ!」と選んでいません。
株式も債券も不動産投資信託(REIT)も、
ぜんぶ持っちゃっています。
国・地域も選んでいません。
日本も先進国も新興国も
ぜんぶ持っちゃっています(しかも「均等」に)
8資産均等型では
投資家の独自の考えとか、
価値観とか、将来の見通し(予想)とか、そんな「色」がまったく見当たりません。
ちょっと意地悪な言い方をするとこのファンドは、
8つの投資対象を、
どれも『信じていない』のです。
また別の側面で言えば、
このファンドは8つの投資対象を
どれも同じくらい『信じている』わけです。
まるで等距離外交のよう・・。
よく考えてみますと、
国内株式、先進国株式、新興国株式、
国内債券、先進国債券、新興国債券、
国内REIT、先進国REIT、
これらすべては「単独で」
インデックスファンドとなり得る投資対象です。
そして基本、上記8資産は、
その内部で時価総額が大きな銘柄ほど高い比率で組み入れる「時価総額・加重平均」の組み入れ方を採用しています。
つまり、
8つの投資対象そのものは
時価総額の加重平均なのに、
それらすべてを
『単純平均』で12.5%ずつ保有しているわけです。
<8つの時価総額加重平均を、単純平均で持つ。>
けっこう深遠で大胆な戦略かもしれません。
ちょっと細部を見てみましょう。
37.5 : 37.5 : 25 ですが、
REITなど、
株式、債券の市場規模に比べればごくごく小さな割合なのに、
25%も組み入れますから、
REITを意識的に多く組み入れることになります。
(換言すれば、REITの成長性にベットしているとも云えます)
あるいは、新興国はどうでしょう?
〇 日本:先進国:新興国
12.5 : 12.5 : 12.5 で「等分」です。
37.5%のうち新興国が12.5%もあるわけですから、
株式、債券ともに、
およそ33%が「新興国地域」への投資ということ。
これも、
株式、債券の時価総額ベースでいうと、
明らかに新興国をオーバーウェイトしていると云えます。
(換言すれば、新興国の成長性にベットしているわけです)
また別の角度から見てみましょう。
8つの資産を『固定』で『均等(12.5%ずつ)』に持ち続けるということは?
どんなに成績が抜群の投資対象も
たくさん買い進めることはありません。
価格が高くなっていく資産は少なく買い、
価格が安くなっていく資産を多く買うという『バリュー戦略』を断続的に行っていくことになります。
成績が悪い資産を、
成績が良い資産よりたくさん買うわけです。
ココ、伝わっていますか?)
こうして見ると8資産均等型のファンドは、
単純で平板というより、
確固とした主張を持つ資産配分を有していると云えるでしょう。
カテゴリ:バランスファンド