インデックス投資全般

どうしてETFの継続コストは、インデックスファンドより安くなったのか?

2021年1月31日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

S&P500指数との連動を目指すETFも、
S&P500指数との連動を目指すインデックスファンドも、

『フクロの中身』は同じ!と前回申し上げました。

しかし、ですよ。

ETF、インデックスファンド。
名称が違うということは必ず【異なる部分】もあるわけで・・。


厳密にいうと、両者のどこが違うのか?
それが今日の物語ですw

(実は)ETFとインデックスファンドでは、
フクロの形状』が異なっているのです。

??


通常のインデックスファンドは
(S&P500との連動を目指す場合)、

大きな、
通気性のよい『透明なフクロ』の中に
505社の株式が山盛りどっさり入っています。

デザート好きな貴方のために、
『ひとくちルマンド』にたとえてみましょう。



画像元:ブルボン

上記は、S&P500との連動を目指すインデックスファンドです。

つまり『ひとくちルマンド』の中身は?
たくさんの、
アメリカの
505社の株式なのです。


(ところで)インデックスファンドには、
毎日購入する機会、毎日解約する機会があります。

換言すると、



画像元:ブルボン

この↑フクロには、外から毎日『現金』が入ってくるわけです。

「S&P500との連動を目指すインデックスファンド100万円分ください!」とか。


100万円のキャッシュが入ってくると、

上記フクロ内では、
指数との連動を崩さないよう、
米国の505社の株式を買い付ける必要があります。←それが仕事ですから。

逆に、



画像元:ブルボン

この↑フクロからは、毎日『現金』が出ていきます。

「S&P500との連動を目指すインデックスファンド50万円分売ります!」という、解約要請も毎日あるためです。


すると、上記フクロ内では、

指数との連動を崩さないよう、
505社の株式をバランスよく売却する必要があります。←それが仕事ですから。


このように通常のインデックスファンドでは、
日々、株式の売り買いが発生し、
そして日々、現金の出入りがあるわけです。


ファンドの管理者(運用会社)にとっては
それなりの仕事量と、それに伴うコストが発生するということ。


いっぽう、S&P500指数との連動を目指すETFは?

中身は同じ『ルマンド』です。
でも、形状がちょっと違っているのです。




画像元:ブルボン

ブルボンによると上記大きなフクロ内には、
実は『細長い12個のフクロ』があって、

そこに「細長いルマンド」が入っています。

(実は)この「細長いルマンド」そのものが、
一定規模の505社の株式の塊、なのです。
(これを「ユニット」と呼びます)

 


ちょっと不思議な感じなのですが、
実はETFというフクロのほうでは『通気性』はありません。

つまり、現金の出入りがありません。



画像元:ブルボン


ETFの管理者(運用会社)が、
ファンドの購入や解約に伴って、株式を売り買いすることも原則ありません。

なぜなら私たち投資家は
S&P500ETFの「受益証券」そのものの売り買いするだけで、
ETFというファンド内に【動き】は発生しないためです。←ココ、大きな違い。

※インデックスファンドの場合、
解約に備えて一定の現金を用意する必要がありますが、
ETFでは受益証券の所有者が変わるだけなので、ファンド内で現金の用意も要りません。


要するに、全般的にみてETFのほうが、
管理者(運用会社)の仕事量が少なくて済む・・。

これが、
これまでETFの継続コストが
インデックスファンドに比べてより低廉だった理由のひとつです。


以下、蛇足になりますが・・。

先ほどルマンドのたとえで
『大きなフクロ内には細長い12個のフクロがあって、』

という言い方をしました。

ETFのユニークなところは、
たとえば「100億円のS&P500ETFを買いたい!」などの大口の注文があった場合は、

指定参加者(AP)と呼ばれる人が
先ほどの『ルマンド』でいうところの



画像元:ブルボン

「細長いルマンド」(505社の株式ユニット)を、100個も200個も急ごしらえして、大口の投資家の注文に応えてしまうのです。

これをETFのクリエーション(設定)と云います。

 

このような機能も、
インデックスファンドにはなく、ETFのみに備わっています。

 

さて、ETFの継続コストがより低廉になったもうひとつの理由は?


これは単純明快。
ETFの場合、販売会社が存在しないため、
そこに運用管理費用(信託報酬)を支払う必要がないのです。

インデックスファンドでは、
販売会社、運用会社、受託会社の3社に、
私たちは運用管理費用を支払う必要があります。

ところがETFでは継続コストは
運用会社と受託会社に支払うのみですね。

 




さて、ようやく
わたくしが申し上げたい所まで辿り着けました(^^)

この20年ほど、
特に米国市場においてはETFの隆盛が顕著になりました。

それによって何が起こったか?

そう、強力なライバル出現によって
インデックスファンドのほうも切磋琢磨せざるを得なくなったのです。

 


日本では少し遅れてそれが起こりましたが、
たとえば『全世界株式』を例に挙げると、

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の運用管理費用は年0.1144%。
そしてバンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)の年間経費率は0.08%と、インデックスファンドが地味ながら追い上げています。

テクノロジーの進化と併せ、
両者の熾烈なライバル関係はこれからも続いていくのです。

カテゴリ:インデックス投資全般

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