スタンダード石油、AT&T、IBM、そしてGAFA
2020年10月24日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
考えてみれば、
こんな高低差が激しいマーケットを
実際に見聞できるなんて、
人生の中でそうそうあるものではありません。
(以下、すべて米国現地日時。)
本年2月19日の高値から、
米国の株価指数『S&P500』はナント33.8%近く下落します。
それもたった5週間足らずで!
(ボトムは3月23日でした。)←あくまで現時点の検証ですが。
画像元:yahoo finance
その後S&P500はたった3営業日で17%以上も上昇し、
4~7月はときに下がることはあっても基本は「戻り基調」で、
8月18日に同指数は2月19日の高値を更新。
まさに怒涛の半年だったわけです・・)
カウンセリングの中でも、
どうして金融市場は上がるのですか?」と質問を受けました。
株式市場の「数字」は?
今現在の、
経済の『体温』を示しているわけではありません。
数多の市場参加者が、
半年から1年先に世の中がどうなっているか?という『予想の集積』を、まるで結晶のように「数字」として指し示してみせること。
市場の株価は毎日変動しますが、
それは近未来の予想が
「毎日修正されている、」ということでもあります。
そもそも原理的に
実体経済の「数字」と
株式市場の「数字」の間にはズレが存在する。
そう捉えておいたほうが、気持ち的にはスッキリするでしょう。
「経済の指標」が上向いたからといって、
必ずしも「株価」が上昇するわけではない可能性に留意しておきましょう。)
さて、この半年の『市場の戻り』ですが、
全体が「まんべんなく」上がっているわけではありません。
たとえばS&P500の中身を観察すると、
まさに『勝ち組』と『負け組』が鮮明になっていることが分かります。
上記は、S&P500に採用されている企業の、
株価上昇率上位と、株価下落率上位の数字(2020年1月~8月17日)
(今や株価指数に大きな影響力を持つGAFAMの5社は、
その優位性が(コロナ渦で)より鮮明になったとも云えます。)
(ところで)あなたは、アメリカ株式市場の歴史の中で、
時価総額が大きな『トップ10』の企業が、
市場全体の中でどれほどの「割合」を占めてきたかご存じですか?
次の図表をご覧ください。
画像元:Index Fund Advisors
上図、いちばん上の、濃い緑の折れ線(Largest 10 Stocks)が、
『上位10社』の市場全体に占める割合(%)のグラフです。
すでに2019年時点で『時価総額トップ10』の企業は
市場全体の20%以上を占めていることが分かります。
しかしながら、
これは「はじめての現象」ではありません。
上位10社企業の、市場全体に占める割合が高かったことが分かります。
「それだけ巨大企業がマーケットを独占していた?」
長い時間軸で見ると、
スタンダード石油、AT&T、IBMなど、
市場占有率が高い大企業はすべからず
政府から厳しい目を向けられてきました。
アメリカという国はダイナミズムの国です。
『健全な競争』こそが
経済のエネルギー源であるという認知はまさに国民レベルです。
自由(放任)と平等(規制)の間を幾度もスイングしてきました。
私見ですが今後『時価総額トップ10』の企業が
市場全体の30%以上を占めるようになれば、
反トラスト法に則って、
たとえばGAFAの「分割論」が叫ばれるようになるのではないでしょうか。
GAFAを生み出してきたわけですが、
巨大化したGAFAがまた自由な競争を阻害することになる・・。
もう一度、グラフを見てみましょう。
画像元:Index Fund Advisors
実は1996年、米国の企業上場社数は「7332社」でした。
ずいぶん多い印象ですが、
それだけ幅広い競争が存在していた証しなのでは?
その後、情報化社会が進展した結果、
上場企業数が減った(現在は「2800社」程度)とも云えます。
上図を見れば、1996年、97年あたりから
一旦低下傾向にあった上位10社の市場における寡占率が、再び上昇し始めていることが分かりますね。
経済って、正直なのです・・。
カテゴリ:経済よもやま話