誰もが自分の国に過剰投資してしまう「ホームバイアス現象」とは?
2020年8月22日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
日本人が、日本(国内)の資産に
親しみを覚えるのは当然でしょう。
株式を例に取ると、日本の会社なら、会社名を聞けばどんな「商品・サービス」を提供しているかがすぐに分かりますし。
(投資対象が「身近」に感じられるわけです)
では、です。
その会社の「株価」が上がることに、
なにか【因果関係】はあるのでしょうか?
(残念ながら)
因果関係はありません。
突然ですが、
あなたもわたしも「生粋のドイツ人」で、
生まれたときからミュンヘンに住んでいると妄想してください。
(ビールとソーセージが大好き!)
そんな私たち(ドイツ人)が
カフェでおしゃべりしていると、
友人のシュミットさんが偶然通りかかりました。
3人はしばしカフェで『投資談義』です。
ドイツ人の3人が、
カフェで株式の話をする際、
どこの国の株の話をすると思いますか?
1.日本
2.ドイツ
3.アメリカ
どうでしょう?
たぶん2.のドイツではないでしょうか。
なぜなら、自分たちの国の会社が
もっとも馴染みがあるためです。
(情報量も一番多いはず!)
あなたが「中国人」だったとしても同じでしょう。
上海の浦東のビジネス街で
会社の同僚と「投資の話」をしていて、
もっとも話題に上るのはやはり中国の会社ではないでしょうか。
自国の資産に過剰に投資してしまうことが知られています。
資産運用の世界では、
『ホームバイアス現象』と呼ばれます。
ホームバイアス現象とは、
投資を行う私たちの『感情リスク』そのものです。
株式、債券、不動産など資産の種類を問わず、
身近に感じるものを優先して、あなたが住む国の資産に、ついついあなたのお金を託してしまうわけです。
いったん『情』が湧くと、
その投資対象を冷徹に判断しようとする力が、情に、負けてしまうのです。
株式、債券、不動産など資産の種類を問わず、「通貨」が自国通貨建てになることも、ホームバイアス現象を後押しします。
余談ですが、高配当株戦略を取る人の中には、「日本の」株式、「日本の」REITなどに投資対象が偏る人が少なくありません。
(いつも思うのですが、「高配当世界株ETF」のような商品がもっと脚光を浴びてもよいのでは?)
たとえば以下の例を、あなたはどう思いますか?
わたしは日本50%、先進国50%に資産配分できていて、「グローバルに分散を施している」と自負しています。
それは残念ながら、ホームバイアスにかかっていると云えます。
10%にも満たないためです。
客観ではなく、主観こそがホームバイアスの正体です。
(気持ち的には)ドイツ人にとっても、
中国人にとっても、
自国以外のたくさんの株式、債券、不動産は「縁遠い存在」に過ぎないのです。
ところで、
ホームバイアス現象が
もっとも顕著に起こるのが『実物不動産』でしょう。
不動産という投資対象は
世界中で星の数ほどあるのに、
日本人にとっては(パブロフの犬のように)
「不動産投資」⇒「日本の不動産」となっています。
それはなぜかというと、
実物の不動産は国によって法令、税制が大きく異なり、
実務的に「外国人の不動産売買」を制限する国もあったりするので、
自然に『選択肢』が狭められてしまうためです。
「不動産投資」⇒「日本の不動産」と反応してしまうのは、
他の何十という国々の、
あらゆる形態の不動産への投資を
「自然に放棄している」という意味で恐ろしいことですらあります。
(この点、株式の選択肢の広範性、取引における公平性は特筆すべきでしょう。)
ところで、
ホームバイアス現象から脱却するのはカンタンなことではありません。
縁もゆかりもない、
あなたが知らない国の株式や債券に平然とリスクマネーを託すことだからです。
(なんと大胆な!)
ここは発想の転換が必要でしょう。
「○○人」であるあなたはもちろん大切ですが、
あなたは「○○人」である前に、あなた自身であるはず。
実は、東京の池袋駅の北口に
「地球飯店」というお店があります。←ホントです!
世界中の、
実にさまざまな料理を隈なく取り揃えていると想像してみてください。
あなたは『地球飯店』のオーナーなのです。
どこの国にも属さない、
『中立の運用者』として、
どの国・地域の、どんな資産に
どのように配分を施すのか・・
それを決めるのは あなたの『自由』なのです。
お金自体はそもそも、
自国か他国かなんて意識していません。
どうぞ【世界目線】で
運用の設計図を作ってみてください。
それが『ホームバイアス現象』を克服する道となります。
カテゴリ:世界投資的紀行