VTIの母親はバンガード・トータル・ストック・マーケット・インデックス・ファンド(VTSMX)。バンガードのインデックスファンドは一物五価なの?
2020年6月20日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
バンガード社のETFは、
そのすべてが『既存のインデックス・ファンド』からの派生商品です。
<具体例>
米国株投資家の間で有名な
「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」(VTI)ですが、
インデックス・ファンド版の、
「バンガード・トータル・ストック・マーケット・インデックス・ファンド」(VTSMX)の派生商品として生まれました。
(バンガード社の場合、インデックス・ファンドが先で、
そのあとにETFが組成されるという『順番』なのです)
両者の「年間経費率」を比べてみると・・、
〇 VTSMX・・年0.14%
今ではETFのほうが低くなっています。
でも、ココちょっと【注意】が必要!
先ほど申し上げたインデックス・ファンドの正式名称は、
「Vanguard Total Stock Market Index Fund Investor Shares」(VTSMX)です。
そう、ポイントは、
「Investor Shares」というところ。
個人投資家向けの【通常版ファンド】という意味合い。
年0.14%の経費率とは?
【通常料金】のことなのです。
実はまったく同じインデックス・ファンドで、
『別のクラス』のものがあります。
??
特別待遇の継続コストにさせていただきますよ」
という、
(なんと言いますか)ちょっとVIP待遇のケースです。
それが、
「Vanguard Total Stock Market Index Fund Admiral Shares」(VTSAX)です。
そう、
「Admiral Shares」という【別のクラス】なのですね。
(これって新幹線でいえば、
「普通車」と「グリーン車」の違いのようなもの?)
そして「Admiral Shares」になると、
年間経費率は(ナント)年0.04%に!
画像元:Vanguard
このコスト水準だと、
ETF(VTI)とほぼ互角になります。
つまり、けいぞくコストの部分では、
一物二価、一物三価だったりしますが、
〇 ETFは一物一価なのです。
話はこれだけで終わりません。
バンガードのインデックス・ファンドには(実は)プロの投資家、
(いわゆる)「機関投資家向け」に、
さらに優遇された手数料が存在するのです。
ここからは、
ETF.comの記事
『ETFs Still Missing From 401(k)s』からの引用です。
Vanguard also has three tiers of institutional pricing.
For a $5 million minimum investment
in the Vanguard Total Stock Market mutual fund,
the institutional cost is 0.035%.
For Institutional Plus,
which requires a $100 million minimum investment,
the cost is 0.02%, while that expense ratio drops
to 0.01% for Institutional Select,
which requires a $5 billion minimum investment.
要は「機関投資家向け」に、
〇 500万ドル以上投資してくれたら、
年間経費率を0.035%にします!
〇 1億ドル以上投資してくれたら、
経費率を0.02%に!
〇 50億ドル以上投資したら、
経費率は0.01%にさせていただきます!
と謳っているわけで・・。
(「バンガード・トータル・ストック・マーケット・インデックス・
ファンド」という商品は現実に【一物五価】となっています。)
そして、話のついでに
日本の投資信託からも関連事例を・・・。
「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」の運用管理費用は、0.68% → 0.6% → 0.57%(すべて税込)へと
少しずつ引き下げられてきましたが、
「セゾン・バンガード」が組み入れる
個々のバンガードインデックス・ファンドにおいて、
よりコストが低い【クラス】に移行できたために、実現していることなのです。
画像元:セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(月次運用レポート)
さて、先ほどの「Investor Shares」と
「Admiral Shares」の話に戻りますが、
インデックスファンドでも、
大口の個人投資家、たとえば、ですが、
1000万円以上ファンドを購入し、保有してくれている人には、
【優遇された運用管理費用を適用する】といった、
サービスの差別化があってもよいと思います。
最後に、以下山崎元さんの記事もご参照くださいませ。
【リテール投信、DB年金、DC年金の運用手数料の歴史的覚え書き】
(アクティブ・ファンドでも、
個人投資家と機関投資家向けで
運用管理費用に驚くほど「差」があることが分かります)
カテゴリ:インデックス投資全般